福岡県は、その立地から古くより日本と中国大陸ならびに朝鮮半島との交流の窓口となっていた。太宰府政庁や迎賓館である鴻臚館(こうろかん)が置かれ、アジアと日本をつなぐ要所として、多くの権力者たちにより、覇権が争われてきた歴史を持つ。今回は戦乱の世が終わり、平和な江戸時代を迎えた福岡の歴史と、県内にある各藩の名城を紹介しよう。
目次
太平の世を迎えた福岡
1600年に起きた天下分け目の関ヶ原の戦いによって戦国時代は終わりを迎え、太平の世といわれた江戸時代へ。現在の福岡県にあたる地域では、黒田長政が筑前国の領主として福岡藩を立藩。さらに、1602年には細川忠興が豊前を中心とした小倉藩を興した。
1620年になると有馬豊氏が筑後北部に久留米藩を、南部には立花宗茂が柳川藩を立藩した。1623年には福岡藩の支藩として黒田長政の次男である黒田長興が秋月藩を立ち上げ、1634年に幕府より認可される。こうして、福岡県では幕末を迎えるまで各藩による統治が続いていった。
福岡藩の城
国の重要文化財に指定された櫓がある福岡城
黒田官兵衛の息子にして、初代福岡藩藩主・黒田長政が1601年から7年かけて築城したのが、福岡城だ。この城は総面積80万平方メートルで東西1キロ、南北に700メートルという平山城としては全国屈指の規模を誇る。江戸時代の後期には、天守台のほかに本丸、二の丸、三の丸と47の櫓、10以上の城門があったといわれるほど巨大であった。
一番の見どころは、国の重要文化財にも指定されている南丸多聞櫓(みなみまるたもんやぐら)。両端に二層の櫓を持ち、内部は16の部屋に分けられている。47ある櫓のうち、現在も同じ場所に存在しているのはこの櫓のみとなっており、築城当時の風景を楽しむことができる。
福岡空港(福岡空港駅)からのアクセス
住所:福岡市中央区城内
アクセス方法:福岡市地下鉄空港線 赤坂駅で下車し、徒歩約8分
かつての中心地であった名島城
1532〜1555年に立花鑑載(あきとし)が築いた名島城。関ケ原の戦い後、初代福岡藩藩主の黒田長政もこの城を居城としていたが、城下町が発展しづらいことをうけて、福岡城の築城をはじめたといわれている。福岡城が完成すると、長島城は廃城となってしまった。
現在はその面影を残していないが、跡地は名島城址公園や名島神社として整備され、天守台の一部も見ることができる。また、この移転の際には石垣や門を福岡城へ運び込んだとされており、福岡城に名島門として残っている。
福岡空港(福岡空港駅)からのアクセス
住所:福岡市東区名島1-15
アクセス方法:福岡市地下鉄空港線 天神駅で下車し、天神中央郵便局前まで徒歩約5分。バスに乗り名島運動公園前で下車、徒歩約10分
小倉藩の城
天守閣と石垣がそびえる小倉城
1569年に中国地方の雄、毛利氏が築いた城を基に、1602年小倉藩の初代藩主、細川忠興が築城したのが小倉城だ。この城の特徴は、唐造りと呼ばれる天守閣。4階と5階に屋根のひさしがなく、4階よりも5階が大きくなっている。
石垣は野面積みという、自然の石をそのまま積み上げる方法で築いている。足立山系から運び出した石を用いて作り上げた石垣は、素朴ながらも堂々たる佇まいを感じさせる。
福岡空港(福岡空港駅)からのアクセス
住所:福岡県北九州市小倉北区城内2-1
アクセス方法:福岡市地下鉄空港線 博多駅で新幹線に乗り換え小倉駅で下車、徒歩約15分
久留米藩の城
見事な石垣が特徴的な久留米城
久留米城は、江戸時代に久留米の地を約250年間にわたって治めた久留米藩の藩主、有馬氏の居城。笹原城の名でも知られているこの城は、筑後川沿いの小高い山に築かれた平山城で、有馬氏が入城した1621年から幕末まで、治世の中心として重要な役割を担った。
本丸に天守はなく、二ノ丸、三ノ丸、外郭を南北に配置した構造。表門の東側にそびえる高い石垣の景観は見事で、落ち着いた佇まいを見ることができる。
福岡空港(福岡空港駅)からのアクセス
住所:福岡県久留米市篠山町444
アクセス方法:福岡市地下鉄空港線 博多駅で新幹線に乗り換え久留米駅で下車、徒歩約15分
柳川藩の城
難攻不落の堅城といわれた柳川城
関ヶ原の戦いで石田三成を捕らえた田中吉政や、豊臣秀吉の元、九州平定で活躍した立花宗茂(むねしげ)が歴代藩主を務めた柳川藩。この藩が藩庁としていたのが、柳川城だ。
多くの観光客から人気の「お堀の川下り」は、旧柳河藩の城下町の面影を楽しみながら、当時の雰囲気を味わうことができる。
福岡空港(福岡空港駅)からのアクセス
住所:福岡県柳川市本城町130
アクセス方法:福岡市地下鉄空港線 天神駅で西鉄天神大牟田線に乗り換え西鉄柳川駅で下車。バスに乗り柳川高校前で下車、徒歩約1分
秋月藩の城
かつての城下町が残る秋月城
黒田長政の三男である黒田長興により、1624年に築かれた秋月城。城は陣屋形式で天守閣は存在せず、表御殿と奥御殿に分かれていた。城の背後には山がそびえているため、出入口は城の前面にある「黒門」と「長屋門」の2つのみ。現在、「黒門」は黒田長興を祀る垂裕神社に移築されているが、「長屋門」は城内で唯一当時の場所のままに残る建造物である。
さらに、秋月城には美しい景観から「筑前の小京都」と呼ばれる城下町がいまも残っている。城下町全体が国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されており、かつての雰囲気を感じながら町を散策できる。
福岡空港(福岡空港駅)からのアクセス
住所:福岡県朝倉市秋月野鳥
アクセス方法:福岡市地下鉄空港線 博多駅で鹿児島本線に乗り換え基山駅で下車。甘木鉄道に乗り換え甘木駅でバスに乗り博物館前で下車、徒歩約10分
福岡には歴史ある名城が残る
福岡には、江戸時代に築城された城はもちろんそれ以前の城跡も多く残っている。福岡を訪れた際は、歴史に触れてみてはいかがだろうか。
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