全国で北海道の次に面積の広い岩手県。その広さ故エリアによって異なる表情を持ち、岩手の魅力を一言で表すのは難しい。
この記事では、
・岩手のエリアごとの特徴
・岩手で観光すべきスポット
を紹介する。
ぜひ参考にしてほしい。
※掲載施設の情報は変更されていることがあります。お訪ねの際はあらかじめご確認ください。
目次
岩手の観光を楽しみたい!
北に青森、西に秋田、南に宮城、東に太平洋と面する岩手。
平安時代初期に坂上田村麻呂率いる朝廷軍によって、中央政権の支配下になるものの、平安時代後期には、豪族・奥州藤原氏が岩手を中心に東北地方一帯を治める。砂金や良質な馬、海外との貿易により富を蓄えた藤原氏は、中央政権と互角に渡り合う力さえも持っていた。また、争いで亡くなった人々の霊を敵味方なく慰めるための堂塔や庭をつくり、争いのない理想郷を築こうとしていた。
時が経ち、明治生まれの童話作家・宮沢賢治は、故郷の岩手をモチーフに心の中に理想郷を創りあげる。その理想郷は、彼の多くの作品に影響を与えている。
奥州・平泉エリア
県南部に位置する。奥州藤原氏の描いた理想郷とその財力を感じ取ることができるエリア。
中尊寺
世界文化遺産。高僧・慈覚大師円仁(じかくだいしえんにん)によって寺が開かれ、12世紀はじめに平和を願う奥州藤原氏初代清衡(きよひら)によって金色堂をはじめとする堂塔が建てられた。
金色堂は12世紀から残る唯一の建物であり、建築・美術・工芸ともに12世紀当時の日本で最高水準の建築物。建物と仏像には金箔が押され、装飾にはシルクロードを渡ってきた夜光貝が使われている。マルコ・ポーロの「東方見聞録」に出てくる「黄金の国ジパング」は平泉と金色堂を指していたという説も。
中尊寺|歴史文化 自然
住所:西磐井郡平泉町平泉衣関202
URL:https://www.chusonji.or.jp
毛越寺(もうつうじ)
世界文化遺産。慈覚大師円仁(えんにん)が寺を開き、藤原氏二代基衡(もとひら)と三代秀衡(ひでひら)が再建。建築物は残念ながらほぼ焼失したが、境内の「浄土庭園」から平安時代に想いを馳せることができるだろう。
広大な池は海を、優雅な曲線を描く池の水際は海岸線を、石を使って荒磯が表現されるなど自然をモチーフにしている。日本最古の作庭書「作庭記」に基づき作られ、その技法を知る上でも貴重な庭園だ。どの季節に訪れても素晴らしい景色を見ることができる。
毛越寺|歴史文化 自然
住所:西磐井郡平泉町平泉字大沢58
URL:https://www.motsuji.or.jp
達谷窟毘沙門堂(たっこくのいわやびしゃもんどう)
切り立った崖に、はりつくように建てられたお堂。窟堂としては日本一の規模。朝廷の命を受けた坂上田村麻呂が岩手を含む東北地方に住んでいた蝦夷(えみし)を討伐し、その戦勝御礼に建てられた。
お堂の中には数々の毘沙門天が並び壮観。近年、パワースポットとしても注目を集めている。
達谷窟毘沙門堂|歴史文化 自然
住所:西磐井郡平泉町平泉字北沢16
URL:https://iwayabetto.com
歴史公園えさし藤原の郷
奥州藤原氏の興亡を題材にした1993(平成5)年NHK大河ドラマ「炎立つ(ほむらたつ)」のオープンセットをテーマパークとして公開。約20haの広大な敷地には大小約120棟の建物があり、平安時代の衣装や鎧の着付、弓矢や貝合わせなどの体験もできる。
桜、紫陽花、睡蓮の花や紅葉をなど、それぞれの季節で景観を楽しむことができる。
歴史公園えさし藤原の郷|エンタメ キッズ 歴史文化
住所:奥州市江刺岩谷堂字小名丸86-1
URL:https://www.fujiwaranosato.com
一関エリア
岩手最南端で平泉の玄関口にもなる一関エリアでは、長い年月をかけてつくられた見事な渓谷美を見ることができる。取り上げる二つの渓谷、猊鼻渓(げいびけい)と厳美渓(げんびけい)は名前こそ似ているがまったく異なる表情を持つ。
猊鼻渓(げいびけい)
日本三大渓かつ日本百景の一つ。さらに日本で唯一、竿一本で舟下りをすることができる。遊歩道はないため、高さ約100mの絶壁の間を舟で進みながら、奇岩や洞窟、滝などの迫力ある景観を楽しんでほしい。大正末期から昭和初期に完成した「げいび追分」を船頭が歌ってくれるので、タイムスリップした気分になれるだろう。
どの季節もお薦めだが、大雨などの際は舟下りができないため、観光センターに確認した方が良いだろう。
げいび観光センター(乗船券発売所)|自然 歴史文化 食
住所:一関市東山町長坂字町467
URL:http:www.geibikei.co.jp
厳美渓(げんびけい)
史跡名勝天然記念物。2kmにわたってエメラルドグリーンの綺麗な川と奇岩や滝、甌穴(おうけつ)などの景観が続き、荒々しい上流とゆったりした下流など、違う表情をみせる。舟下りはできないが、散策路やビュースポットがあるので、自分のペースで楽しむことができる。
ここではぜひ名物「郭公(かっこう)だんご」を頼んでみてほしい。川の上に張られたロープについた籠に注文と代金を入れて木槌を鳴らすと、対岸にあるお店が籠を引き上げ、注文しただんごとお茶を入れて降ろしてくるシステムだ。
厳美渓(げんびけい)|自然 歴史文化 食
住所:一関市厳美町字滝の上地内
URL:https://iwatetabi.jp/spot/detail.spn.php?spot_id=763
花巻・遠野エリア
県南部、平泉の北に位置する。宮沢賢治の童話や説話集「遠野物語」など文学の世界観に浸ることができるエリアだ。
宮沢賢治童話村
宮沢賢治の童話の世界観を体現した施設。「賢治の教室」では童話に出てくる動植物などが展示され、「賢治の学校」では宇宙、天空、大地などをテーマにした部屋がある。
なお、広い敷地を利用して毎年期間限定のライトアップが行なわれており、森の中に置かれたオブジェやミラーボールが幻想的な空間を作りあげている。期間中は、日中もオブジェが設置されているので、ライトアップとは違った雰囲気を楽しもう。
宮沢賢治童話村|歴史文化 エンタメ アート
住所:花巻市高松26-19
URL:https://www.kanko-hanamaki.ne.jp/spot/article.php?p=133
宮沢賢治記念館
宮沢賢治が散策した地に、全国のファンの寄付によって建てられた彼自身を知ることができる施設。自筆原稿や愛用品、資料、映像などをとおして彼の思考をたどってみよう。上には花巻市内を一望できる展望ラウンジがある。
なお、記念館駐車場内には彼の代表作「注文の多い料理店」に出てくる「山猫軒」があり、レストランと売店になっている。彼の作品にちなんだメニューもあるのでぜひ立ち寄ってみよう。
宮沢賢治記念館|歴史文化
住所:花巻市矢沢1-1-36
URL:https://www.city.hanamaki.iwate.jp/miyazawakenji/kinenkan
花巻12湯(じゅうにとう)
花巻市にきたら、ぜひ立ち寄りたいのが温泉だ。市の西部に花巻温泉、鉛(なまり)温泉など12の温泉地があり、日本一深い岩風呂や、平安時代に発見されたといわれる古い歴史をもつ温泉も。雰囲気も泉質もそれぞれ違うので自分好みの温泉を探してみよう。
なお、冬の宿泊客向けに、ランタンを空に打ち上げるイベントを開催している。冬に行くならスケジュールを確認しておきたい。
花巻12湯|体験 歴史文化
住所:花巻市内
URL:https://www.kanko-hanamaki.ne.jp/hanamaki12to
めがね橋
宮沢賢治の代表作「銀河鉄道の夜」は、この橋を走るJR釜石線の前身である「岩手軽便鉄道」をモデルに描かれたといわれる。橋の全長は約107.3m、高さが約17.8m。20m間隔で均等に並ぶ5つの半円からなるアーチ橋が特徴。
現在も花巻から釜石までを結ぶ路線の一部として利用されており、通常の電車とは別に、1日1本SL列車が走っている。夕暮れになると橋がライトアップされ、日中とは違った幻想的な世界に。
めがね橋(宮守川橋梁)|歴史文化 アート 体験
住所:遠野市宮守町下宮守30-37-1
URL:https:www.tohokukanko.jp/attractions/detail_1118.html
とおの物語の館
民俗学者・柳田國男が遠野地方に伝わる民話を採集した「遠野物語」の世界を体感できる施設。
素朴で温かい遠野の方言で昔話を聞ける「遠野座」では、童心にかえった気分になれるだろう。ほかに切り絵や映像で物語を紹介する「昔話蔵」、柳田國男の生涯と功績を紹介する「柳田國男展示館」も。
とおの物語の館|歴史文化 体験 エンタメ
住所:遠野市中央通り2-11
URL:https://tonojikan.jp/kanko/mukashibanashi.php
遠野ふるさと村
遠野市内の江戸中期から明治中期にかけて住まれていた「南部曲り家」を移築・保存し、この土地の農村風景を再現したスポット。ひとつの集落のようなつくりで、小川や水車、畑もあり、かつての農村の暮らしが続いているかのような雰囲気だ。
魚つかみどりやそば打ち、藍染などの体験ができる。予約制のものもあるので、事前に確認しておきたい。
遠野ふるさと村|自然 体験 歴史文化 エンタメ
住所:遠野市附馬牛町上附馬牛5-89-1
URL:https://www.tono-furusato.jp
三陸海岸エリア
東部に位置し、リアス式海岸や鍾乳洞など、自然の地形が織りなすダイナミックな景観を見ることができる。
浄土ヶ浜
日本の水浴場88選の一つ。白い岩、青々と茂る松の木々、エメラルドグリーンの海が特徴。極楽浄土のような景観から「浄土ヶ浜」と名付けられた。
エメラルドグリーンの浄土ヶ浜を満喫できるのが、小型船で遊覧するツアー。ツアーで行く「青の洞窟(八戸穴)」は、入口の半分が海に浸かっており、透明な海水は差し込む太陽の光によって美しい青色に照らし出される。
浄土ヶ浜|自然 体験
住所:宮古市日立浜町32番地ほか
URL:https://www.city.miyako.iwate.jp/kanko/jyoudogahama.html
龍泉洞
日本三大鍾乳洞の一つといわれ、国の天然記念物。奥から湧き出る清水が数カ所に渡って深い地底湖をつくり、第一地底湖は、水深35mにもかかわらず底が見えるほど水が透明。名水百選にも選ばれている。足元が悪く急な傾斜もあるので、歩きやすい靴がおすすめ。
なお、入口向かい側には、洞窟そのままを利用した世界初の洞窟科学館がある。石筍や鍾乳石をみることができたり、この洞窟に住んでいた原始時代の人々の生活ぶりも再現されている。
龍泉洞|自然 体験
住所:下閉伊郡岩泉町岩泉字神成1-1
URL:http://www.iwate-ryusendo.jp/
北山崎展望台
リアス式海岸を眺めることのできる展望台。絶景である。高さ200mの断崖に、奇岩怪石、大小さまざまな洞窟とダイナミックな海岸線が約8km続く。
展望台は3カ所あり、駐車場から段差がなく車イスでも行ける第1展望台、迫力満点の第2展望台、森林浴もできる第3展望台と異なる景観が観られる。なお、第1展望台からは海面際に降りることもできるので、断崖を下からも見てみよう。
北山崎展望台|自然
住所:下閉伊郡田野畑村北山129-10
URL:https://www.vill.tanohata.iwate.jp/kankou/see/kitayamazaki.html
久慈の森アンバーランド
国内唯一の琥珀専門博物館や、琥珀の採掘や琥珀を使ったアクセサリー作りなど、琥珀に関する総合施設。久慈は日本随一の琥珀の産地であり、古墳時代からすでに大和朝廷へ献呈されていた。
博物館では久慈と世界で採れた琥珀や、世界最大の琥珀製モザイク画を見ることができる他、琥珀で敷きつめられた床を歩いて癒し効果を体感するなど、琥珀のポテンシャルを実感できる試みも。
久慈の森アンバーランド|アート 歴史文化 自然 体験
住所:久慈市小久慈町19-156-133
URL:http://www.kuji.co.jp
盛岡エリア
県西部に位置し、城下町であり県庁所在地でもある盛岡市。企業やサービス業が集まりつつも、歴史を感じさせる建物が溶け込んでいる。
盛岡八幡宮
1680(延宝8)年に建立された八幡宮。安産祈願から学業成就、縁結び、芸事上達、料理の神様まで、ご利益はさまざま。人々の生活に根ざした信仰の拠りどころとして、多くの参拝者で賑わう。鮮やかな朱塗りの大社殿が印象的。
盛岡八幡宮|歴史文化
住所:盛岡市八幡町13-1
URL:https://morioka8man.jp/
報恩寺
1394(応永元)年に創建されたと伝えられる報恩寺。このお寺の見どころは「五百羅漢」。京都の9人もの仏師の手によってつくられた499体の羅漢像が残っている。これだけの数が保存されているのは全国的にも珍しい。
居眠りや無駄話をしていそうな像や、服装からインドや中国の僧かと思われる像など実にさまざまなので、じっくりと見てみよう。
報恩寺|歴史文化 アート
住所:盛岡市名須川町31-5
URL:https://www.tohokukanko.jp/attractions/detail_1714.html
岩手銀行赤レンガ館
1911(明治44)年に盛岡銀行して建てられ、のちに岩手銀行に名前を変える。2012(平成24)年に銀行としての営業を終え、いまは一般公開されている重要文化財。
赤レンガの建物は東京駅を設計した辰野金吾によるもので、中は銀行時代を彷彿とさせるレトロな内装。当時の活気を思い起こさせるような雰囲気だ。
岩手銀行赤レンガ館|アート 歴史文化
住所:盛岡市中ノ橋通1-2-20
URL:https://www.iwagin-akarengakan.jp
もりおか町家物語館
盛岡市の保存建造物などを改修し、文化を発信する施設として2014(平成26)年に開館。
盛岡の特徴ある町家造りの建物、昭和の商店街や盛岡ゆかりの人物の相関図を見ることができる。調度品を見たり、おもちゃで遊んだりとノスタルジックな雰囲気を楽しんでほしい。
もりおか町家物語館|歴史文化
住所:盛岡市鉈屋町10-8
URL:https://www.city.morioka.iwate.jp/shisetsu/bunka/kinenkan/1006837.html
小岩井農場まきば園
盛岡市から北西に12km進むと民間総合農場としては日本最大の「小岩井農場」がある。1891(明治24)年、日本鉄道会社副社長・小野義眞氏、三菱社社長・岩崎彌之助氏、鉄道庁長官・井上勝氏の3名が共同創始者となり、その頭文字をとって作られた。宮沢賢治もよく散策しており、詩「春と修羅」に小岩井農場が書かれている。
一般開放されている「まきば園」には、乗馬やアーチェリー、トランポリン、バター作り、ハンモック、寝転んで岩手山を観られる絶景スポットなどがある。濃厚なソフトクリームや、ここでしか買えないチーズ、バターケーキなどもあるので、事前にチェックしておきたい。さらにガイドツアーに参加すると、非公開の森林エリアを見ることができる。
小岩井農場まきば園|自然 体験 食
住所:岩手郡雫石町丸谷地36-1
URL:https://www.koiwai.co.jp/makiba
広大な岩手を楽しもう
世界文化遺産、大自然、文学やノスタルジックな雰囲気など、岩手はさまざまな魅力に溢れている。広大なので、行く前にある程度目処をつけておき、奥州藤原氏や宮沢賢治が思い描いた理想郷を感じてみてほしい。
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