本日もJALグループの翼をご利用いただき、誠にありがとうございます。今回は、操縦室にいるパイロットがどんな価値観を持って飛んでいるのか、その一端をご紹介いたします。
突然ですが、世界中のパイロットは何を大切に操縦しているでしょうか?操縦技倆(ぎりょう)・判断力・知識・健康─もちろん、どれもとても大切にしています。
正解は「エアマンシップ」です。世界中のパイロットが昔から使っている言葉で、ニュアンスとしては「スポーツマンシップ」や「心・技・体」に近いかもしれません。操縦技倆・判断力・知識・健康に加え、責任感・使命感・謙虚かつ素直で、向上心を持ち、周りを思いやれること。心のあり方や心構えともいえます。
それらすべてを含めてエアマンシップといいます。世界で統一された定義がないため多少違いはありますが、アメリカやヨーロッパの航空団体と、日本での内容に大きな違いはありません。
では、なぜ心のあり方が大切なのでしょうか。航空の歴史は1903年、ライト兄弟による初飛行から始まりました。以来、航空機の発達には目覚ましいものがあります。それと同時に、先人たちのたゆまぬ努力と、決して少なくない犠牲から学び取ってきたものが連綿と受け継がれています。「技術と知識に優れているだけでは、よいパイロットとはいえない」という先人の英知が、エアマンシップの観念を生み出したのではないかと考えています。
――操縦は人格の反映なり
――どんなに機械が発達しても、最後は人間
――信ずるより確かめよ、慣れても初心なれ
――自分の弱さや間違いを認めて謝れる、そんな人であれ
これらは私が先輩からいただいた言葉で、とても大切にしています。操縦するということは、尊い命をお預かりすることです。安全を脅かすものは自然や機械の故障だけではありません。自らの慢心も大きな脅威です。自分を律し、警戒心を持って基本に忠実な仕事をすることは大切なエアマンシップの一つです。
また、空の上ではパイロット・管制官は国籍や会社を問わず皆仲間です。お互いが邪魔をせず、効率よく飛べるよう気遣いあうのがエアマンシップです。それは、安全運航という共通の目標を持つ社内の仲間に対しても同じです。
そして、お客さまへのエアマンシップも大切です。安全を確保したうえで、揺れが少ない飛行と定時での発着を目指し、かつ地球にも優しいフライトとなるよう力を尽くしています。また、皆さまの不安をできる限り取り除くことが、安心で快適なフライトにつながると考えております。
今日もエアマンシップを発揮したパイロットたちが操縦しております。引き続きJALグループのフライトで快適なひとときをお過ごしくださいませ。本日のご搭乗、誠にありがとうございます。
佐々木亮一 Ryoichi Sasaki
JAL
エアバスA350型機 機長
出身地:千葉県
趣味:野球、ゴルフ
座右の銘:不撓不屈
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