サンフランシスコは、私の祖父が1920年代に日本の銀行の支店を設立するために、何年間か暮らしていた街です。それまでの配属先だったロサンゼルスからサンフランシスコに移った祖父は、この街にすっかり心を奪われてしまったようで、彼のアルバムには当時の風景や人々の写真がたくさん収められています。
昨年9月、このサンフランシスコにあるデ・ヤング美術館で、北米初の日本の漫画の展覧会「アート・オブ・マンガ」が開催されることとなり、作品が展示される10人の作家の一人として、私にもついにこの街を訪れる機会がめぐってきました。
この展覧会の発起人でありキュレーターを務めたアメリカ人のニコル・クーリッジさんは、日本の大学に留学して日本の伝統工芸や美術を学び、そして日本の漫画を愛してやまない日本文化研究家です。数年前にロンドンの大英博物館で開催され、大きな反響を呼んだ日本の漫画の展覧会も彼女が仕掛けたものですが、2025年にはサンフランシスコでも、ニコルさんの日本の漫画に対する情熱と思い入れが存分に発揮されることになったのでした。
サンフランシスコといえば今やシリコンバレーを拠点とするITとリベラルアーツが交錯する文化都市ですが、今回の展覧会も多くの人々の表現に対する好奇心を焚き付けて、開催初日には過去25年で最も多い動員数を記録しました。
西洋の絵画とも違う、漫画という二次元の世界の奥深さを知ってもらおうと意気込むニコルさんと一緒に、私も開催日から告知やインタビューに奔走。そんな中、空き時間を見つけては名物の無人タクシー「ウェイモ」に乗って街へと繰り出し、現地に暮らす友人には「アップル」の創業者であるスティーブ・ジョブズゆかりの地を案内してもらい、ナパ・バレーではおいしいワインを楽しんで、祖父が惚れ込んだサンフランシスコをとことん満喫する滞在となったのでした。
やまざき まり
漫画家・文筆家・画家。日本女子大学国際文化学部国際文化学科特別招聘教授、東京造形大学客員教授。1967年東京生まれ。84年にイタリアに渡り、フィレンツェの国立アカデミア美術学院で美術史・油絵を専攻。比較文学研究者のイタリア人との結婚を機にエジプト、シリア、ポルトガル、アメリカなどの国々に暮らす。2010年『テルマエ・ロマエ』でマンガ大賞2010受賞、第14回手塚治虫文化賞短編賞受賞。2015年度芸術選奨文部科学大臣賞新人賞受賞。2017年イタリア共和国星勲章コメンダトーレ受章。2024年『プリニウス』(とり・みきと共著)で第28回手塚治虫文化賞のマンガ大賞受賞。著書に『ヴィオラ母さん』『ムスコ物語』『歩きながら考える』『扉の向う側』『貧乏ピッツァ』、作品集『ヤマザキマリの世界 1967─2024』など。現在、『続テルマエ・ロマエ』を集英社「少年ジャンプ+」で連載中、第1・2巻が好評発売中。
(SKYWARD2026年6月号掲載)
※記載の情報は2026年6月現在のものであり、実際の情報とは異なる場合がございます。掲載された内容による損害等については、一切の責任を負いかねますのでご了承ください。
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