島の中央部から辺りを見渡しても、山らしき山は見あたらない。それどころか見事に整地された広大な畑が、湖のなかに広がっていることに不思議さを感じることだろう。
低い。火山でできた島にしてはあまりにも低すぎる。しかしこの島は、れっきとした火山に由来する島。それを裏づけるように島内には天然記念物の溶岩トンネルがあり、大塚山公園という山にちなむ名前の場所がある。
この島の成り立ちが面白い。実はその大塚山こそがこの島を造ったのであり、なんとその標高はわずか42mという日本でも有数の低い火山だったのだ。粘り気の弱い溶岩が約20万年前に大地に緩やかに流れ出して固まり、その後長い年月を経て1万年ほど前にその周囲に海水が入り込み、中海(潟湖)のなかにある島となった。
さらにユニークなのは島名の由来。諸説あるうちで面白いのが『出雲国風土記』のもので、鷲が海のタコをくわえて大空を飛んだ姿がよく見られたことから「たこじま」と呼ばれ、いつしか「だいこんじま」になったという説。定かではないが実に面白い。
DATA|都道府県:都道府県:島根県 人口:3,241人*
大根島へのアクセス
東京(羽田)、大阪(伊丹・神戸)、名古屋(小牧)、福岡、仙台、静岡、隠岐から出雲縁結び空港へ、JALグループ便またはコードシェア便が毎日運航*。松江駅から市営バスで八束町・由志園入口まで約50分。
加藤庸二
かとう ようじ/島フォトグラファー。国内の有人島で上陸可能な430余島のすべてを踏破した島のスペシャリスト。著書に『日本百名島の旅』『島の博物事典』ほか多数。
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