時間の確認をするだけならスマホで事足りる現代、腕時計は時間以上の「個性」や「きらめき」を表示するアイテムになった。手巻き、自動巻き、クオーツ……動力の違いだけでも腕時計にはいくつもの種類があり、それぞれの特性が魅力と使い勝手につながる。目的とスタイルに合った種類を選ぶことが重要なのだ。
この記事では、
・腕時計の種類
・それぞれの長所と短所
・自分に合うタイプを見定めるポイント
について詳述する。特徴を知って、あなたの手首にふさわしいきらめきを!
目次
機械式とクオーツの2つに大別される
まずは外見の違いではなく、時計内部のメカニカルな違いから。腕時計は動力によって、「機械式」と「クオーツ」の2つに分かれる。
「機械式」は巻き上げたスプリング(ぜんまい)が戻ろうとする力を動力とするもので、スプリングの巻き上げ方法によって、さらに「手巻き式」と「自動巻き」の2つに分かれる。
機械式(手巻きと自動巻き)
手巻き式は腕時計のケース(側)の側面に突起したリューズを指で回すことでスプリングを巻き上げる。一方、自動巻き式はいわば時計自身がスプリングを巻き上げてくれる仕組み。内蔵された半円形の部品(ローター)が装着した人の腕の動きによって回転することで自動的にスプリングを巻き上げる。
手巻き式はいったんスプリングを完全に巻き上げれば、約40~50時間動き続ける。自動巻き式は装着した本人が動き続ける限りは時計も動き続けるが、未装着のまま放置すると止まってしまう。約8時間の装着でスプリングの巻き上げはフルとなり、フルになれば腕につけていなくても40時間ほどは動き続ける。
機械式腕時計の魅力は、パーツが精緻を極めていながらも、仕組みそのものはシンプルであることにある。理系に疎い人でも、スプリングが生んだ動力が歯車を介して針に伝わる様は容易に理解できるだろう。
わかりやすさは親しみやすさに通じる。リューズで巻き上げるにせよ、腕の動きで間接的に巻き上げるにせよ、使い手が直接関与して機械を動かすことで時計との間に一体感が生まれる。
なお、自動巻きは高級腕時計の主力ラインで、各ブランドさまざまなモデルをラインナップしているが、そもそも自動巻きの技術が誕生したのは、なんと1700年代のことだ。自動巻き腕時計の仕組みと、技術進化の歴史についてもっと知りたい方は、以下の記事も参考にしてほしい。
自動巻き腕時計を徹底解説!仕組みと歴史、扱い方と保管方法を知ろう
クオーツ
クオーツは電池を動力源に、水晶の規則的に振動する性質(毎秒3万2,768回)を利用して時計を動かす方式。世界最初に発売されたクオーツウォッチはセイコーの「クオーツ アストロン」だった。1969年のことだ。
クオーツ式の最大の特長は、機械式と比べて圧倒的に精度が高いこと。機械式には1日に数秒の誤差が生じるのに対して、クオーツのそれは月に20秒程度とされる。短所を挙げるとしたら、電池が切れると全く機能しなくなり、そのたびに交換が必要だということ。
太陽電池時計(光発電時計)
さらに、光エネルギーを動力源とする「太陽電池時計」(「光発電時計」とも呼ばれる)がある。これは、光が当たると電気が発生するソーラーセルが組み込まれ、光による電気エネルギーを電池に蓄え、この電力によって時計を動かすというもの。
太陽光でなくても、蛍光灯などほんの微弱な光によっても発電することができる。太陽光発電は環境にインパクトを与える物質の排出なしに動力を得られるという点で、機械式と同様にエコ・フレンドリーである。
電波時計
動力源の話からは少し逸れるが、作動方式の異なるものに「電波式」がある。機械式、クオーツと全く異なるシステムで抜群の精度を誇る。これは、「誤差は数十万年に1秒」とされるセシウム原子時計から生成される日本標準時(標準電波)を受信し、自動的に時刻とカレンダーを修正するもの。この方式による時計を「電波修正時計」「電波時計」と呼ぶ。
文字盤表示はアナログか、デジタルか?
次に外見を見ていこう。腕時計にとって“顔”と言える「ダイヤル(時刻やカレンダーを表示する部分)」にはアナログ表示とデジタル表示がある。
アナログ時計の印象を決める「インデックス」
ダイヤル上にあって時刻を表す記号を「インデックス」というが、アナログ・ウォッチではインデックスのスタイルとデザインが時計の印象を決めると言っていいだろう。そこには無数の表現があるが、いくつかの「基本の形」がある。
例えば、「バー」は時刻を示す棒状のメモリだけを盤上に配したもの。スッキリとした見かけになる。
算用数字で時刻を表すのが「アラビア」。時刻が明確にわかるという点ではこのインデックスの右に出るものはない。数字のフォント、12個の数字のうちのどれを使い、どれを使わないかなど、表現の幅は無限に広い。
数字をローマ数字(Ⅰ、II、Ⅲ、Ⅳ…)で表したものは「ローマ」。クラシックでラグジュアリーな雰囲気を演出する。
丸い点で時刻を表示するのが「ドット/ポイント」。点の小さなものが「ドット」、大きなものが「ポイント」だ。スポーティーでアクティブな印象になる。
右脳で見るか?左脳で見るか?
時針、分針、秒針の組み合わせで時間を表示するアナログ式に対して数字で時刻を示すのがデジタル。使い手にとっては、アナログの場合は画像から時間を直感的に認識するのに対し、デジタルの場合は数字から時間を論理的に認識するという、大きな違いがある。
「今、おおよそ何時ぐらいだろう?」が瞬時にわかるのがアナログ、「正午まで正確にあと何秒あるだろう?」に的確に答えてくれるのがデジタル。いわば、アナログは右脳的、デジタルは左脳的な時計なのだ。
デジタルのメリットは機能性と自由なデザイン
デジタル・ウォッチの表示は液晶、LED、回転ディスクなどによって行われる。腕時計によるデジタル表示は「ハミルトン」が1970年に開発したLEDによるものが最初だったとされている。
歯車、スプリング、モーターなどのパーツを使わないデジタル時計は、故障のリスクが低く、大量生産が可能。価格を下げることで大衆性を獲得した。また、カシオの「G-SHOCK」に代表されるような「屈強さ」という新たな価値を生んだ。
デジタル・ウォッチは時計以外の機能──ストップウォッチ、タイマー、方位計、高度計、潮汐計、等々──が盛り込みやすいのも特長である。このことがデジタル・ウォッチとスポーツ、アウトドアアクティビティーを結びつけた。ビジネスシーンで装着しても、スポーティーでアクティブな印象を与えるだろう。
また数字だけで表示ができるので、ダイヤル・レイアウトの自由度が高い。SF的、近未来的なイメージの演出もお手のものだ。IT系でデジタルを選ぶ人が多いのはこのことと無縁ではないだろう。
デジタル腕時計の魅力と選び方、おすすめブランドについてはこちらも参照。
ケースの形状は腕時計の「輪郭」
「丸顔で優しそう」「角張った顔で意志が強そう」など、人の印象に顔の輪郭が与える影響は大きい。ケース(主に金属で作られる時計外側の部分)の形状の種類とそれぞれがどのような印象を生むかを知っておくといい。
ラウンド
最もオーソドックスな正円形。視認性が高いのが最大の強み。正統派の印象でフォーマルなシーンにも好適。
スクエア
角を丸くした正方形。別名「カレ」。デジタル・ウォッチに多い形状。インデックスのデザインによってポップな印象を与える場合とクラシックな印象を与える場合がある。
クッション
ラウンドとスクエアの中間的な形。ラウンドと同様に視認性が高い。最も無難な印象。重厚感があり、カジュアルなシーンで強みを発揮する。
トノー
樽を意味するフランス語から名づけられた。縦長で中太りの形がスマートで高級感を醸し出す。
レクタンギュラー
長方形。ずばりクラシカルな印象。アンティークウォッチに多い形状でもある。ドレッシーな装いに合う。
オクタゴン
高級腕時計でお馴染みの八角形の形状はアール・デコ時代の置き土産。正統、クラシック、ラグジュアリー感。カジュアルな場やスポーツシーンには不向きか。
強度か、軽さか、優美さか。ケースの素材を知る
形状と同様に重視したいのがケースの素材。見た目の印象もさることながら、耐久性、硬度(キズのつきにくさ)、メンテナンスの手間、金属アレルギーのリスクの有無も腕時計選びのポイントにしたい。
ステンレススティール
最も一般的なケース素材。高級モデルからカジュアルモデルまでをカバーしている。丈夫で長持ち。衝撃や酸化(錆)に強い。各メーカーが独自の合金を競って開発し、個性を打ち出している。
チタン
最大の売りは軽さ。ステンレススティールと比べると約4割も軽量だ。金属アレルギーを起こしにくいことも長所の一つ。
硬質であるため強度は高いが、加工がしにくいのが弱点だったが、現在では加工技術の革新により、ほかの材質と遜色のない表現ができるようになった。海水に強く、ダイバーズウォッチに使用されることも多い。
ゴールド
格調高い輝き、ラグジュアリーな雰囲気、変わらぬ価値……誰もが憧れる素材だ。純度を表すカラット(K)は、24Kを含有率100%とした指標。ケースに使われるのは純度75%の18Kがポピュラーだ。
これに銀や銅、パラジウムなどを混ぜることにより、イエローゴールド、ホワイトゴールド、ピンクゴールドなど、デリケートな色合いの違いが生まれる。晴れの舞台によく似合う。反面、カジュアルな場では浮いてしまうことも。
シルバー
ゴールドと並ぶ高貴な質感。その柔らかな光沢と奥ゆかしい雰囲気はゴールドには真似のできない唯一無比の価値と言える。
硫化などによって変色し黒ずみを生じることが玉に瑕だが、クリーナーで磨くことで愛着が増すということもある。また、シルバーをわざと燻すことで黒ずんだ風合いを生かしたものもある。
プラスチック
大量生産が可能で製造コストが低い。透明にしたり、ポップなカラーを出したりしやすいことも魅力。比較的安価でフォーマル感は出しにくいが、それを逆手に取る上級テクニックも。
ほかにも、軽量で高硬度のセラミックス、希少価値が高く、高額モデルのみに使われるプラチナなどの素材がある。
着け心地を決めるのはベルト
見た目の印象と装着感を大きく左右するのがベルト。またベルトを付け替えることで時計のイメージを一変させることもできる。ベルトの主な素材は以下の3つ。
メタル
ケースと同様に最もポピュラーな素材はステンレススティール。サビや衝撃に強く、加工によっては高級感も出せるので、幅広い用途の腕時計に用いられている。短所は、重いことと、寒冷期には装着時にヒヤッとすること。使用するうちに小さな傷がついてくるが、ステンレス用のコンパウンドなどで手入れをすることができる。
メタル系にはほかに、チタン、ゴールド、シルバーなどがあるが、それらはケースと同材であることが多い。
レザー
クロコダイル、カーフ(牛革)、バッファロー、トカゲ、オーストリッチなどの素材がある。高級感、エレガンスを演出するにはもってこい。肌なじみも金属などに比べて圧倒的によい。
タイプによっては「自然好き」「ワイルド」などの雰囲気を纏わせることもできる。金属や人工素材と比べ、水や塩に弱いのが短所。皮革用クリームなどで手入れをする必要がある。
ラバー、シリコン
アウトドア、ミリタリー、ダイビングなどヘビーデューティー系の腕時計によく使われる。石鹸や中性洗剤を使って水洗いするだけと手入れが簡単で、金額も手頃。金属アレルギーの人も使える反面、通気性が悪く、皮膚の弱い人は肌荒れに注意が必要。
なお、腕時計のベルトはいつも肌に触れているため、皮脂などの汚れがつきやすいパーツだ。そして汚れたり劣化したベルトは、意外と人の目につくもの。カジュアルな腕時計なら、気軽に自分でベルト交換をしてみるのも楽しい。
腕時計のベルトを交換するには?選び方と初心者でも失敗しない方法
種類ごとの特徴を理解して、「最良のパートナー」を!
今回は腕時計の種類について詳しく紹介した。それぞれの特性をつかみ、長所と短所を頭に入れて、装着するシーン、環境、使用目的に最もマッチした1点を見つけてほしい。
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