皆さま、エコオペという言葉をご存じでしょうか?エコオペとはEcological and Economical Operationの略語で、環境にやさしく、経済的な航空機運航の実施を目的とした取り組みのことです。本日は私が乗務するATR型機という飛行機と、私たちが取り組むエコオペのなかでも「消費燃料の削減」に焦点を当ててご紹介します。
ATR型機はフランス製のターボプロップ機(プロペラ機)で、主に生活離島路線を結ぶ航空機としてJALグループではJAC(日本エアコミューター)とHAC(北海道エアシステム)で使用されています。JACではATR42-600(座席数48)とATR72-600(座席数70)の2機種を運航しています。
ATR型機は旅客機として大変優れた燃費性能を誇っており、同サイズのジェット機と比べ消費燃料はおよそ6割です。東京から京都までの距離(直線距離で約370km)程度であれば、一般的な自動車に乗って二人で移動した場合とATR72-600で満席だった場合とでは、一人当たりの消費燃料はほぼ等しくなります。
そんなATR型機の持つ燃費性能を最大限に発揮し、CO2排出量削減につなげるため、私たちは次のような工夫をしています。
≫ 離陸時
長い滑走路では端まで行かず、途中から進入して離陸することで地上走行距離を短くしています。また条件を満たせば、通常は風向きに正対する滑走路を使用するところをあえて逆方向から使用し、地上走行距離や離陸後の飛行経路を短縮することもあります。
≫ 巡航中
燃費を上げるため、空気密度が低く空気抵抗の少ない、高い高度を選定しての飛行や、管制官と調整し航空路をショートカットして飛行することがあります。
≫ 着陸後
路面の走行性を確認したうえで、両側にあるエンジンのうち片方のエンジンだけで駐機場まで地上走行し、消費燃料を軽減します。
お伝えしきれませんが、これら以外にもさまざまな工夫をしています。
フライト後は実際に使用した燃料量と飛行計画上の燃料量を比較し、どのくらい節約できたかを確認するのがひそかな楽しみとなっています。安全で快適に、時間どおりに皆さまを目的地へ送り届け、なおかつ消費燃料を節約できたときはパイロットとして大きな達成感があります。
もちろん、エコオペの取り組みは安全を最優先に、定時性・快適性に支障がない範囲で実施していますのでご安心ください。片側のプロペラだけが動いている状態でATR型機が地上走行していたら、それはエコオペの取り組みの一つです。環境保護は小さな積み重ねが大切だと考えています。温かい目で見守っていただけたら幸いです。
大橋諒 Ryo Ohashi
日本エアコミューター
ATR42/72型機 機長
出身地:神奈川県
趣味:キャンプ
座右の銘:継続は力なり
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