カリフォルニア発祥の地であるサンディエゴには、バルボアパークという大型の都市公園があります。ここには美術館に博物館、そして劇場といった文化施設がいくつも立ち並んでいますが、なかでも世界的に有名なのが創設から既に100年を過ぎた巨大な動物園でしょう。
そもそも動物園というものは教育・研究を目的として設けられていたものなので、東京やロンドンなどでも文化的な場所に設置されている傾向がありますが、サンディエゴも同じです。この動物園内に生息している動物は絶滅危惧種もあわせて約800種、全部で約4000匹。かつては世界有数の飼育数を誇ったジャイアントパンダもいました。園の敷地面積も東京ドームの8.5倍だそうですから、通常の動物園とはかなりスケールが違います。
私がこの動物園を訪れた時季は春先でしたが、サンディエゴの日差しはもう夏のよう。しかもいざ歩きだすと途方もない敷地の広さにただ圧倒されるばかりで、なかなか目的の場所まで辿り着くことができません。
私は歩くのを断念し、園を一周している2階建てのバスに乗り込んで、車窓からさまざまな動物たちを眺めることにしましたが、ここではチーターをトレーナーと一緒に間近で観察する企画などが常時用意されているので、ご家族連れはぜひゆとりを持った来訪をお勧めします。
ちなみにこのサンディエゴ動物園のもう一つの特徴は、園内に植えられている70万種類以上の植物です。気候だけではなく園のメンテナンスがよいのか、散策しているとまるで森やジャングルの中にいるような気持ちになりますが、私が見ていた花には野生のハチドリや珍しい蝶が飛んできたこともありました。
人間が楽しめるだけではなく、そこに生きる動物たちをしっかり慮った優れた動物園には、野生の生き物たちも引き寄せられてくるということなのかもしれません。
やまざき まり
漫画家・文筆家。東京造形大学客員教授。1967年東京生まれ。84年にイタリアに渡り、フィレンツェの国立アカデミア美術学院で美術史・油絵を専攻。2010年『テルマエ・ロマエ』で第3回マンガ大賞受賞、第14回手塚治虫文化賞短編賞受賞。2015年度芸術選奨文部科学大臣賞受賞。著書に『プリニウス』(とり・みきと共著)、『オリンピア・キュクロス』『国境のない生き方』『ヴィオラ母さん』『パンデミックの文明論』(中野信子と共著)、『たちどまって考える』など。
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