リュックサック(バックパック)で旅に出る。それは、低予算で世界中を旅する個人旅行者の専売特許では決してない。リュックのデザインも進化し、スマートな大人の旅にだって似合うモデルが多数生まれているのだ。
しかし、これまでスーツケース一辺倒だった人がリュックで旅に出ようと思ったら、どれくらいの容量を選べばいいのか、パッキングのコツはあるのか、カジュアルに見えすぎないかなど、不安に思う点も多いだろう。
そこで、この記事では、
・リュックで旅に出るメリットとデメリット
・旅行用リュックの選び方
・編集部おすすめの旅行用リュック10選
を紹介する。
リュック旅行初心者の方も、リュックをもっと上手に使いこなしたい方も、本記事を参考にしていただきたい。
目次
リュックサックとバックパック、何が違うの?
ところで、あなたはリュックサックとバックパックの違いを明確に答えられるだろうか?どちらも荷物を背負うカバンのことだが、そもそも何語なのだろう?
想像がついた方も多いかもしれないが、バックパック=backpackは、「背中(back)」に背負う「包み(pack)」という意味の英語。
リュックサックはドイツ語由来。さらにナップザックはオランダ語由来なのだとか。いずれも荷物を背負って運ぶ袋のことを指し、それぞれに用途の違いはない。
ただ、「バックパッカー」という言葉からイメージされるように、「旅行用のある程度の容量があるもの=バックパック」と認識しておくと、店頭や通販で探すときもスムーズだ。
ちなみに「デイパック」は、日帰り旅行やハイキングなどのデイユースに適した小ぶりのサイズのものを指す。
リュックで旅が快適になる理由
リュックが山登りやキャンプなどのアウトドア向け……というのは過去の話。今やスーツ姿にリュックで通勤というビジネスパーソンだって珍しくはない。では、リュックで旅に出てみると、どんな快適さが手に入るのだろう?
両手があく
リュックの利点で真っ先に思い浮かぶのは、「両手があく」ということ。スマートフォンの操作一つとっても、両方の手を使えたほうが何かとスムーズだということは、日常生活でも実感があるはずだ。
カメラを構える、財布を開く、屋台で買ったたこ焼きを食べる……そんな場面では、スーツケースなどから手を離さざるを得ない。しかしリュックなら、荷物はあなたにぴったり寄り添ったまま。置き引きなどの被害にびくびくすることなく、旅を楽しめるだろう。
機動力が増す
石畳でスーツケースのキャスター音がうるさくてうんざりしたり、階段しかないホテルで重たいスーツケースを運んで体力を消耗したり……。そんなとき、リュックなら足取りも軽やかに、ストレスなく荷物を運ぶことができる。
公共交通機関を利用しての旅行で乗り継ぎ回数が多い場合も、リュックは便利。バリアフリー化が進んだとはいえ、駅や空港では「段差」との遭遇率が高い。見知らぬ土地では、エレベーターを探してうろうろする時間もストレスになる。
また、スーツケースに比べて預けられるコインロッカーが圧倒的に多いというメリットも見逃せない。ちょっとした空き時間ができたときも、リュックなら柔軟な対応ができる。
身軽に動けるからこそ、「歩いて5分の、さっき見かけた店まで戻ってみる」というような行動もとりやすくなり、旅の楽しみが広がるだろう。
機内持ち込みに切り替えやすい
リュックなら、機内持ち込みできるサイズも多い。例えば空港で、何重にもとぐろを巻いているチェックインカウンターに遭遇したとき、すでに搭乗券を持っているなら機内持ち込みにさっと切り替えてはいかがだろう?(この時、機内持ち込み不可のハサミなどが入っていないかは、チェックをお忘れなく!)
旅行で気をつけたいリュックの心得
ここまではメリットを見てきたが、全ての物事にはデメリットもある。リュック旅では、以下のことに気をつけよう。
何でも持っていこうと思うなかれ
旅先に、日々使っているグッズをあれこれ持っていきたい人は注意。リュックに詰め込んだ分だけ、その荷物の重みはあなたの肩にのしかかってくる。スーツケースに何でもぽんぽん入れていた人は、「これ、ほんとに必要?」と問いかけながらパッキングを!
防犯意識を高く持とう
リュックがスーツケースに劣る点は、堅牢性と防犯性。背負うとどうしても自分の死角に入ってしまうので、旅先によってはジッパー部分にワイヤーロックを取りつける、盗難防止ネットで覆うなどの対策が必要だ。耐刃物素材にするという選択肢もある。
また、リュックを前に抱える、取り出しやすい場所には貴重品は入れない、といった防犯意識を持つことで、少しでも被害にあう確率を下げるようにしたい。念には念を入れて!
超高級旅館などには向かない
スタイリッシュな商品も増えたとはいえ、やはりカジュアルな印象が拭えないリュック。日本の超高級旅館や、五つ星クラスのホテルの雰囲気にはそぐわない。
食事利用の場合はクロークに預けることもできるが、宿泊先のランクが高い場合、リュックはあきらめたほうが無難だ。
旅に最適なリュックの選び方
自分の体格・体力に合わせて選ぶ
1泊2日から長期にわたる旅まで、「サイズ違いのリュックを使い分ける」という愛用者もいるが、何より大切なのは「自分が背負えるサイズ・運べる軽さ」のものを選ぶということ。
2泊くらいまでなら容量30L~40L程度、1週間なら50L以上がメーカー側が推奨する目安だが、リュック初心者なら実物を見て、実際に背負って、専門スタッフのフィッティングを受けてから購入することをおすすめする。
また、自分が旅先で必要とする最低限の荷物がどの程度なのかを、把握することも大切だ。旅の荷物は三者三様なので、Aさんの1泊2日の荷物量が、Bさんの3泊4日分にもなり得る。
基本的な荷物量によって、とにかくリュック本体の軽さを重視すべきか、重量はあっても容量が確保できる大きめサイズを選ぶほうがいいのか、視点が定まってくるはずだ。日常的に持ち歩いているカバンの中に、自分がいつも何を入れているのかも参考にしてほしい。
収納ポケットで選ぶ
リュックの使い勝手は、背負い心地と収納力にかなり左右される。ポケットの数が多いほど仕分け収納がしやすくなり、物が迷子になりづらいのは言わずもがな。また、本体上部に加え、底部からも開けられる設計だと、荷物の出し入れがしやすい。今話題のワーケーションに持っていくなら、ノートパソコン用ポケットが必須だ。
背面設計で選ぶ
長時間、自分の体と接することになる背面パネルもポイント。中にぎゅうぎゅうに入れた荷物の角が背中に当たって、苦痛となった経験はないだろうか? 薄くて柔らかすぎない、しっかりしたものを選ぶようにしたい。また、メッシュなどの蒸れない素材かどうかで快適さが変わってくる。
防水・防犯素材で選ぶ
雨が多いエリアや季節に旅するなら、防水・耐水素材かどうかもしっかりチェックを。はっ水素材には汚れがつきにくいというメリットもある。また、二重蓋になっているものなら、防犯面はもちろん防水の観点でも安心して使える。
また、安全面を考慮して耐刃物素材を選ぶのも手だ。ナイフでバックパックを切られる……というリスクを軽減できる。
ファッション性で選ぶ
もし、1泊2日程度の国内旅行を想定しているなら、アウトドアブランドではなく、お気に入りのファッションブランドから探す、という選択肢もある。また、アウトドアブランドの商品でも、限定品の柄物などを選べばおしゃれのアクセントとして活躍するはずだ。
パッキングのコツが知りたい!(リュック編)
旅立ちのパッキングに最も影響するのは洋服のたたみ方。Tシャツや下着は「くるくる巻き」、それ以外は綺麗にたたんで、カテゴリーごとに重ね、ランドリーネットやジッパー付きポリ袋、風呂敷などでまとめたい。
旅の間は「洗うものと洗わないものを分けるアイテム」もお忘れなく。圧縮袋なども役に立つ。
リュックの中で、「洗面用具はリュックの左側の上」「充電コード類はこのポケット」など、だいたいの定位置を決めておくと迷わずに済む。リュック内の地図を書き、それをスマホで写真撮影しておけば安心だ。
リュック以外のパッキングのコツやTシャツのたたみ方はこちら。
旅行パッキングの極意|荷物を減らすコツやスーツケース内の仕分けを解説
編集部おすすめの旅行用リュック10選
それでは、機内誌『SKYWARD』編集部がおすすめする、旅行用バックパックを具体的に見ていこう。アウトドアブランドのものは過酷な条件下での使用を想定して作られているので、やはり信頼できる。
この記事ではリュック初心者の1泊2日旅行を想定し、容量30~40Lのモデルを紹介する。
ミレー「サース フェー 40+5」
1930年代に初のショルダーストラップ付きのバッグを販売し、その名を知られるようになった「ミレー(Millet)」。数年後にそれをバックパックに進化させ、フランスの山岳ブランドとしての地位を確立した。
「サース フェー 40+5」はハイキングから本格縦走まで幅広い用途に対応するロングセラーバックパック。耐久性抜群のCORDURA®ナイロン素材に、背中の蒸れを防ぎ乾燥へと促す快適性の高い背面システムを採用している。
ショルダーとヒップにはクッション性抜群のフォームを使用し、重荷での長時間行動でも快適さを保つ。背面長はM(48cm)とL(51cm)の2種類あるので、体格に合わせて選ぶことができる。30+5、60+20の展開もあり。レインカバー付き。
容量:40+5L
重さ:1,570g
税込価格:23,100円
ザ・ノース・フェイス「ビッグショット・クラシック」
「ザ・ノース・フェイス(The North Face)」は1968年にアメリカ・カリフォルニア州のバークレーで創業。アウトドアからタウンユースまで幅広いシーンに対応しており、機能性とデザイン性を巧みに融合させたラインナップが人気だ。
「ビッグショット・クラシック」は、定番商品のクラシカルなデザインを継承し、素材強度と機能面を充実させた多機能バックパック。背骨への負担を軽減する構造と、エアメッシュと立体構造による高い通気性で、快適に使い続けることができる。
17インチまでのノートパソコン用スリーブとタブレットスリーブ、サイドのメッシュボトルポケット、内側の小物整理用オーガナイザー、フロント2カ所のジッパー付きポケットなど、抜群の収納力を誇る。
容量:32L
重さ:1,270g
税込価格:18,700円
グレゴリー「デイアンドハーフパック」
1977年にアメリカ・カリフォルニア州サンディエゴで誕生したアウトドアブランド「グレゴリー(Gregory)」。ホイットニー山の頂をデザインしたロゴでおなじみだ。代名詞であるデイパックは、豊富なカラーリングと柄が人気で、性別を問わず支持されている。
「デイアンドハーフパック(DAY AND A HALF PACK)」は、ブランドの象徴であるレザージッパープルを配した古びないデザインで人気の定番バックパック。その名の通り、1泊2日程度の旅行に最適な容量だ。内側のスリーブにはノートパソコンや書類などが収納できる。
シンプルなデザインで1kgを切る重量が魅力だが、ショルダーハーネスに取りつけられるパデッドケースや、正面に取りつけられるシングルポケット、2ウェイポケットでカスタマイズすることも可能。
容量:33L
重さ:930g
税込価格:24,200円
コロンビア「エッセンシャルエクスプローラー30L」
1938年にアメリカ・オレゴン州で創業したアウトドアブランド「コロンビア(Columbia)」。フィッシングベストで一世を風靡し、その後もさまざまなウェアやシューズ、アウトドアギアを発表している。
「エッセンシャルエクスプローラー」は、通気性が高く、クッション性のよいショルダーパッドを使ったトレッキングバックパック。ショルダーパッドは、ブロック状にくり貫かれ、メッシュ素材になっているので、汗をかいても快適に過ごせる。
さらにショルダーパッドにシューズなどにも使われるクッション材「テックライト」を使用。軽量なうえ、クッション性がよいため、長時間背負っていても負荷を軽くしてくれるという。レインカバーや着脱可能なウエストパッド付き。
容量:30L
重さ:920g
税込価格:13,090円
カリマー「リッジ30 ミディアム」
1946年にイギリスで創業した「カリマー(Karrimor)」。もともとサイクルバッグのブランドで、その名は「carry more=もっと運べる」に由来している。その後、クライマーからのリクエストを受けリュックサックの製造をスタートした。
「リッジ30」は、カリマーの定番中型リュック。背面システムには、3Dバックパネルを内臓し、フィット感と安定性を高めている。体に触れる部分には「活性炭加工」を施したエアメッシュ素材が使われており、吸汗・速乾性に優れ快適さが長続きするのが嬉しい。
マチ付きのフロントギアポケット、付属レインカバー専用ポケットを配置するなど、収納力も高く、荷物をうまく整理できそうだ。レディース向けフィッティングの「リッジ30 スモール」もある。
容量:30L
重さ:1,550g
税込価格:19,800円
アークテリクス「ブライズ32バックパック」
1989年にカナダで、2人のクライマーによって創立された「アークテリクス(Arc’teryx)」。強いフィット感を持つ3Dハーネスなど、クライマーの視点で考え抜かれた機能がほかのアウトドアブランドと一線を画している。
「ブライズ32バックパック」は、旅行から日常生活まで自在に使いまわせるようデザインされた高機能ハイキングパック。人間工学に基づいたエアロフォーム™熱成形バックパネルは蒸れにくく、パッド入りのショルダーストラップにより快適な背負い心地を実現している。
メインのコンパートメントにはトップから簡単にアクセスでき、フロントのジップ付きポケットも使いやすい作り。サイドポケット、トップポケット、荷室内側のポケットそれぞれに、ドリンクや小物などを収納できる。
容量:32L
重さ:1,190g
税込価格:27,500円
マムート「ゼオンカーゴ」
「マムート(Mammut)」の歴史は、1862年にカスパー・タナーがスイスのディンティコンで登山用ロープメーカーとして働き始めたことに端を発する。その後、寝袋やアパレルなどに商品を広げ、1989年にスイスのバックパック専門メーカー”Fürst”を買収。数年後、マムートのブランド名で製造と販売を開始。
マムートが本社を置くスイスのゼオンという街で、通勤用バックパックとして製作された「ゼオンカーゴ」。「ワーク」コンパートメントには、オフィスで使うラップトップ、タブレット、書類などを収納し、仕切られた「クライミング」エリアには、仕事の後にクライミングジムで必要となる荷物を収納するというコンセプト。
登山靴専用のコンパートメントがあるほか、柔らかいパッドが入ったアナトミカルシェイプのショルダーストラップにより、長時間でも快適な背負い心地を実現する。仕事とレジャーの両方の荷物が必要となる短期の旅行に最適だ。
容量:35L
重さ:950g
税込価格:20,350円
モンベル「トライパック 30」
日本発信のアウトドアブランド「モンベル(mont-bell)」。1975年、日本のトップクライマー辰野勇氏が二人の山仲間と共に大阪で設立した。以来“Function is Beauty(機能美)”と“Light & Fast(軽量と迅速)”をコンセプトに商品開発を行っている。
軽量性と強度を兼ね備えた独自の高強度ナイロン素材を使用した、3通りの持ち方ができるトラベルバッグ「トライパック 30」。ショルダーハーネスは使用しないときは本体に収納できる。クッション材を内蔵した背面ポケットにはノートパソコンやタブレットなどが収納可能。
サイドハンドル部分には荷室が安定するフレームを内蔵し、軽量ながら型くずれしにくい工夫がなされている。傘専用ポケット、荷室のメッシュポケットなど、日本のブランドらしいこまやかな気遣いも嬉しいポイントだ。
容量:30L
重さ:907g
税込価格:14,850円
コールマン 「ウォーカー33」
1901年にアメリカのカンザス州で創業したコールマン(Coleman)。当時の農村生活を一変させたオイルランプの製造に始まり、現在はアウトドア生活を快適にする製品の数々を、幅広く販売している。
ウォーカーシリーズのリュックは、アウトドアだけでなく街中でも違和感のないシンプルなデザイン。オーガナイザーポケットも付き、見た目以上に物が入り、使い勝手がいい。
容量:約33L
重さ:約685g
税込価格:7,480円
ミステリーランチ「ミッションスタッフル 45」
アメリカモンタナ州を拠点に、2000年からミリタリー、ハンター、森林消防隊や登山家たちに愛用されているバックパック(リュック)メーカー。品質と耐久性、背負い心地などから、近年日本国内でもファンを増やしている。
そのトラベルシリーズに登場したミッションスタッフルシリーズは、ちょっと変わり種のリュックだ。
ショルダーストラップは着脱可能。下部には靴を収納できるコンパートメント付き。丈夫な330デニールのヒトラロービックナイロン生地を採用しながら、600gと軽量。小さくたたむとセーター1枚分ほどの大きさになり、旅行中の予備バッグとしても活躍する。
色は3色。紹介する45Lのほか、30L、60Lの展開もある。
容量:44L
重さ:600g
税込価格:11,550円
次の旅はリュックで身軽に出かけよう
リュックで旅行する自分の姿がイメージできただろうか?次はぜひ、気になったバックパックを試しに店舗へ足を運んでほしい。路面店を展開しているブランドもあるし、アウトドア用品専門店で数種のブランドを比較検討してみるのもいいだろう。
行き先や旅の目的に合わせて、スーツケースやリュックなど、旅行カバンの種類を使い分けることができるようになれば、これからのあなたの旅が一層充実したものになるはずだ。
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