旅のあいだ、タフな環境にさらされるスーツケース。海外の空港やホテルで手荒な扱いを受けたり、石畳の道を長く引いたりして、お気に入りのスーツケースが破損してしまうことも意外に多いもの。
でも慌てずに。実は大抵のものは修理ができる。この記事では、
・故障パーツ別の直し方と費用相場(ボディ・キャスター・鍵など)
・修理をお願いするならどのお店?
・保険でカバーできることもある
をご紹介していこう。
目次
症状別のおおまかな修理内容と費用相場
ここではスーツケースの主な破損例と、おおまかな修理の内容、費用の相場を紹介していく。
なお、価格はいずれも損傷の大小や修理の難易度によって大きく変わるため、参考程度にとどめてほしい。実際に修理に出す際は、写真や実物などで見積もりを取ることを忘れずに。
ボディの割れ、亀裂
ポリカーボネイト製などの、いわゆる一般的な樹脂製スーツケースの場合、修理は内側から樹脂で補強した上、塗装して仕上げる。金額の目安は5,000円~15,000円程度。
塗装は同じ色を調色して吹きつけるが、シボ柄などまでは再現できないことが多い。そのため完全に元どおりとまではいかないケースもある。割れた「かけら」がないと修理を断られることもあるので、あるなら捨てずに取っておきたい。
ボディのへこみ
熱を当てたり内側から叩くなどして復元して補強、塗装で仕上げる。サイズにもよるが1カ所7,000円~10,000円程度で直ることが多い。単にへこんでいるだけならば割れや亀裂よりは修理しやすく、仕上がりも元どおりに近い。こちらもシボ柄の再現塗装は難しい。
アルミ合金製のスーツケースの場合も叩いて修理する。自動車の板金塗装に似た作業だ。
フレームの変形
スーツケースの骨格であるフレームの変形は、ハンマーなどで矯正して復元。10,000円~15,000円程度。
持ち手やキャリーハンドルの破損
修理不能な場合は純正品や代替品に交換。持ち手交換が概ね5,000円程度から、キャリーハンドルの交換は10,000円程度から。昨今の製品では大半が樹脂製パーツを採用しているため、破損の場合、部分修理では強度が足りず、ユニットごと交換となるケースも。
メーカーや正規代理店なら純正部品で直せることも多いが、そうでない場合はサイズが合う同等の代替品となり、見た目が揃わないこともあるので気をつけたい。
キャスター破損
純正品や代替品に交換。1カ所あたり3,000円~7,000円程度。複数のタイヤを同時に交換するとその数だけ加算される。また、タイヤだけの交換か、台座ごとの交換かでも金額・修理可能性は異なる。
なお、2輪タイプでローラーブレード用タイヤを装着したものは回転の滑らかさで人気だが、タイヤのゴムが柔らかい分だけ、小石を噛んで引きずるとすぐに接地面が削れてしまうので、日頃から扱いに注意したい。
ファスナー破損
引手(スライダー)のみの交換であれば1個4,000~5,000円程度。ファスナーの縫いつけや務歯(エレメント)部分の修理は5,000円程度。一式を純正品や代替品へ交換する場合は15,000円はかかるものと思っておきたい。
鍵の解錠、修理、交換
症例によって5,000円~20,000円程度。スーツケースに組み込まれて設計されたものだけに、交換は基本的に純正品となり、高価なことも少なくない。
ちなみに鍵が開かないなどのトラブルについては、こちらで解決できるかもしれない。
スーツケースの鍵の使い方、開閉法からトラブル対処法|TSAロックも詳細解説介
費用感まとめ
・ボディの割れ、亀裂:およそ5,000円~15,000円
・ボディのへこみ:およそ7,000円~10,000円
・フレームの変形:およそ10,000円~15,000円
・持ち手の破損:およそ5,000円〜
・キャリーハンドルの破損:およそ10,000円〜
・キャスター破損:1カ所 およそ3,000円~7,000円
・ファスナー破損:およそ4,000~15,000円
・鍵の解錠、修理、交換:およそ5,000円~20,000円
修理に出す前に、手持ちのスーツケースの価格も確認しておきたい。サイズにもよるが、大手メーカー製でもおおむね20,000~30,000円程度でしっかりとしたスーツケースが購入できるため、新規導入した方が安上がりというケースもある。
以下で紹介する保険対応なども含め、総合的に修理を検討したい。
どこに依頼するのがベスト?スーツケースの修理屋さんいろいろ
スーツケースの破損はたいがい突然起こるもの。「いざ修理というとき、どこに頼めばいいのだろう?」と思う方も多いはず。ここでは、スーツケースを修理する際の依頼先としての選択肢を紹介しよう。
メーカー
最も確実な依頼先。構造をよく知り、純正部品を持っている。工期は長めになる傾向があるが、仕上がりの美しさで勝るものはない。次の旅を急ぐのでない限り、まず最初に当たりたい。
また、有名ブランドのスーツケースには3年保証や5年保証などの保証がついているものもあるので、保証期間内ならカスタマーサービスや販売店に問い合わせよう。例えば日本のACE(エース)が展開するブランド「プロテカ」は、3年の保証期間の間なら何度でもどんな理由でも修理が無料と手厚い。
郵送型の修理専門ショップ
スーツケース修理を専門に扱う工房。「第一ボデー」や「山澤工房」などが有名。郵送する手間と送料かかり、納期も短くはないが、専門性の強さが特徴。製造メーカーでは対応できない修理をしてくれることも多く、心強い。
店舗展開型のリペアショップ
「ミスタークイックマン」、「靴専科」など。身近に店舗があるならば、一番手軽に修理できる場所といえる。
空港内のリペアショップ
大きな空港にはリペアショップがある。スーツケースの解錠やキャスター交換など、旅行中の急なトラブルに対応してもらえる。
DIYで直す
ダメージを受けやすいキャスターは、大手通販サイトで修理用として代替品が多数売っている。キャスター2輪で1,000円程度からと値段も格安。腕に覚えがあり工具の扱いに慣れた人に限り、挑戦してもいいだろう。
なお、スーツケースのパーツ固定は通常、ネジ類ではなくリベットやハトメでかしめてあることが多い。そのため壊れたパーツを外す際はリベットを電動ドリルで破壊したり鉄ノコで車軸を切断したりと、危険な作業が伴いがちだ。
代替品のキャスターはたいがいビス留めとなり、緩み防止剤がついてはいるものの、飛行機で運んだりスーツケースを転がすうちに緩んでくる可能性は否定できない。
キャスターに限らずスーツケースは全般にどのパーツにもかなりの負荷がかかっており、想像以上に強度が必要なもの。旅先で外れて苦労しないよう念入りに作業をしたうえで、折にふれて再点検が必要だ。
飛行機に搭載したときに破損してしまった場合は?
実際にスーツケースが破損する場面としては、経年劣化によって道端で突然壊れるなどのほか、空港や飛行機に関係するタイミングでの破損も多い。ここでは、そうした場合の対応に触れてみよう。
飛行機搭載時に明らかに破損が見つかった場合
この場合はすみやかに該当の空港スタッフないしは航空会社スタッフに申告したい。破損が起きた状況によっては、補償されることもある。
海外旅行では特に到着空港や経由地で手荒な扱いを受けたり、ベルトコンベアでの自動運搬中に落ちたり引っかかったりで壊れることも考えらえる。
輸送中のさまざまな不運の結果としてスーツケースが「壊れて出てくる」わけだが、万一そんな目に遭ったとしても、決して感情を高ぶらせず冷静に係員に状況を説明しよう。
旅行保険の携行品補償
海外旅行では、多くの方が事前に旅行保険に入られていることと思う。この保険に設定された「携行品補償」や、単独の「携行品損害保険」などがスーツケースの破損を補償してくれる場合が多いので、忘れず活用したい。
なお、携行品補償は1点あたり100,000円を限度とするケースが一般的だ。決められた手順や提出書類などもあるので、対応可能かどうかも含め確認しておこう。
お気に入りのスーツケースと長く付き合う喜び
国内・海外ともに数多の旅をしてきた立場から言えば、過酷な使用を強いられるスーツケースは「いずれ壊れるもの」だと理解している。
新品に傷や凹みがつくのを悲しむ気持ちは大いに理解できる一方で、スーツケースは確かに消耗品であり、たくさんついた傷こそが旅の勲章だとも考えられる。
もちろん愛着がある分だけ修理はしたいし、モノを大切にする意味でも少々壊れた程度で安易に買い換えるのも控えたい。そうした意味で「スーツケースは修理できる」と知っておくのは大切だ。
また、金額面を考えて、修理はキャスターやハンドルなどのパーツ類にとどめ、ボディの割れといった大きな修正になる場合は買い替えを視野に入れるなど、ケースバイケースで賢い判断をしたい。
そして何より旅行前には、ハンドルやキャスター、鍵の開閉などをひととおりチェックして、トラブルを未然に防ぐようにしておこう。
国際線の預け入れ手荷物は一般的には23kgまで。例えばその重さのスーツケースの車輪が旅先のヨーロッパの石畳の上で突然壊れたら……。そう考えるだけでも、スーツケースが故障なく動くことの有り難みが理解できる。
いいスーツケースを長く愛用し、心に残る素敵な旅を重ねてほしい。
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