昨今、スーツケースの「軽さ」が従来以上に注目されている。空港でのセキュリティーチェックの強化やLCCの台頭などによって手荷物の重量制限が一層厳格化してきたことが、最も大きな理由だろう。
また、素材は年々進化しており、かつては考えられなかったほど超軽量でありながら、堅牢さも十分なスーツケースが増えてきた。
この記事では、
・軽量スーツケースの魅力と注意点
・主なブランドの製品おすすめ7選
を紹介しよう。
目次
なぜ軽いスーツケースがいいの?メリットと注意点
言わずもがなかもしれないが、具体的なおすすめへと進む前に改めて軽量スーツケースのメリットと注意点を挙げてみたい。そもそも、なぜ軽いスーツケースがいいのだろうか。
軽量スーツケースで、旅はこんなに快適に
軽量スーツケースのメリットの第一は、文字通り「軽い」こと。スーツケースが軽ければ、荷物の総重量が軽くなる。あるいは飛行機での預け入れ荷物制限重量(国際線で一般に23kg)ギリギリの場合などは、ケースが軽い分だけ肝心の中身に重量を充てられる。
中身に重さを充てられるということは、つまり着替えや旅行アイテムを多く持参できたりお土産を多く買えるということ。旅自体の楽しみが増えると言ってもいい。
『SKYWARD+』で撮影も担当する筆者の例を挙げれば、カメラ機材用のキャリーケースは細かな中仕切りのせいでケース自体の重さが約8kgもある。このため機材や着替えの一部を諦めざるを得ないことが多く、最近は一般的な軽量スーツケースを使うことにしている。機材の保護は必要最低限のインナーケース。それだけで、実に約3.5kgの「空き容量」を稼ぐことができた。
かように軽量スーツケースにはメリットが多く、ケース自体や中身の荷物が壊れない限りは「軽いに越したことはない」というわけだ。
軽量スーツケースで注意したいポイント
一般に軽さと相反するのは堅牢性。しかし大手ブランドの軽量スーツケースのほとんどが素材と技術でこの問題をクリアしてきた。軽いのに壊れない。そんなスーツケースが増えたのだ。
選ぶ際のポイントは、軽量化の犠牲になったものがないかに留意すること。例えば引いて転がすキャリーハンドルの支柱が2本ではなく1本のT字型の場合。軽くはなるが構造的にヨレに弱く、設計がよくないと走行中に左右に振れた場合、ねじれるような動きになることも。
またポリカーボネイト製ボディは軽いが柔らかく、押すとある程度ペコペコとへこむような造りだ。中身が衣服ならさほど問題はないものの、ノートパソコンやカメラなどは外からの衝撃をもろに受けかねない。
自分の旅のスタイルや具体的な詰める中身を考えながら、実際に店頭で触れてみるなどして納得のいく製品を選ぶといいだろう。
超軽量のおすすめスーツケース7選
ここでは超軽量で知られる有名ブランドの製品を紹介しよう。ブランド全体の特徴を捉えつつ、一例となる具体的なスーツケースを挙げてゆく。なお、各社ともさまざまなサイズを揃えているが、今回は「概ね30L以上で一番小さい(軽い)もの」を代表例とした。
プロテカ(PROTECA)エアロフレックス ライト
▲出典:ACE(URL)
日本のACE(エース)が誇る高級ブランド「プロテカ」。日本製ならではのクオリティーと品のあるデザインで好評だ。熟練した職人が手作業で作り、「購入後3年間の無償修理」を約束している点も自信の表れ。航空会社による破損や運送中に生じた損傷なども対象で、期間内なら何度でも修理ができる。
そんなプロテカのなかでもエアロフレックス ライトは世界初となるグラスファイバー(炭素繊維)複合素材「ウルトラスリング」の採用により、機内持ち込みサイズ37Lがわずか1.7kgという超軽量な逸品だ。
ボディ素材はポリプロピレン織布とグラスファイバーとの積層構造で、シェルに刻まれたリブも強度アップに貢献。キャスターの静音性や突出しないデザインのジッパーなど細部の設計もさすが。
プロテカ エアロフレックス ライト No.01821
▲出典:ACE(URL)
サイズ:H55×W36×D24 cm
容量:37L
重量:1.7kg
カラー:ブラック、グレー、オリエンタルネイビー、カーマインレッド、シフォンブルー
価格:63,800円(税込)
機内持ち込み:可(国内線100席以上)
サムソナイト(Samsonite) シーライト
▲出典:サムソナイト(URL)
スーツケースといえばサムソナイト。そんな言われ方さえするスーツケースの代名詞のようなアメリカンブランドは1910年創業の老舗。1世紀以上の歴史を持ち現在でもトップブランドとして走り続けるだけに、製造上のノウハウも確かだ。
2008年に登場した同社史上最強・最軽量のコスモライトシリーズは独自の革新的素材「カーヴ」を採用。二枚貝を模したような美しいシェルデザインを持つスーツケースは世界各地の空港でもしばしば見かける。
そんな同シリーズをリニューアルした最新モデルがシーライト。世界的なデザイン賞『レッド・ドット・アワード』のベスト・オブ・ベストを受賞したシルエットはそのままに、スムーズに回るダブルホイール、ダブルチューブの伸縮ハンドルへと変更。剛性感も使い勝手もさらに向上した。
ラインナップのなかでも特に55cmサイズ(36/42L)のスピナー55は2.1kgと軽い。加えて、このサイズに限り側面にUSBポートを備える点も個性的。あらかじめ手持ちのモバイルバッテリーを内側から接続しておけば、スーツケースを開けなくても列車などでの移動中に外部USBポートからスマートフォンなどに充電できる。
サムソナイト シーライト スピナー55
▲出典:サムソナイト(URL)
サイズ:H55×W40×D20/23 cm(拡張可能)
容量:36/42L
重量:約2.1kg
カラー:オフホワイト、ブラック、チリレッド、ディープブルー
価格:62,700円(税込)
機内持ち込み:可(非拡張時。国内線100席以上)
サンコー鞄(SUNCO) SUPER LIGHTS MG-C
▲出典:サンコー鞄(URL)
愛知県のサンコー鞄は1893(明治26)年に創業した日本の老舗メーカーだ。日本のSUNCO社内にある試験室で開発段階などに念入りな耐久試験をし、生産は中国の自社工場や委託工場で行う。
ここで紹介するのは同社フラッグシップモデルSUPER LIGHTSシリーズの最新作。フレームは従来のアルミから頑丈なマグネシウムへと変更、ボディも一般的なポリカーボネイトから新素材HTpolycaになっている。
強度的に有利なフレーム式で、鍵を差し込んで開け閉めするシリンダーロックが馴染み深く、TSA(米国運輸保安局)ロックにも対応している。老舗らしい質実剛健な作りと軽さを両立。他社を圧倒するカラー展開も魅力だ。
サンコー鞄 SUPER LIGHTS MG-C
▲出典:サンコー鞄(URL)
サイズ:H63×W43.5×D28 cm
容量:56L
重量:約3.5kg
カラー:鏡面ネイビー、エンボスネイビー、エンボスラベンダー、エンボスカッパーオレンジ、エンボスシャンパンゴールド、エンボスローズピンク、エンボスヘアラインシルバー、エンボスビリジアングリーン
価格:28,600円(税込)
機内持ち込み:不可
リモワ(RIMOWA) Essential Lite
▲出典:リモワ(URL)
リモワは1898年にドイツのケルンで創業したスーツケースの名門。有名なアルミ製トランクは1937年に創業者の息子リヒャルト・モルシェックが生んだもので、彼の名の頭文字こそが「RIMOWA」の由来だ。アルミ素材とともに同社のアイコンとなった筋状の模様・グルーヴデザインは、航空機の黎明期にインスピレーションを受けたもの。
時代に応じてラインナップも進化を続け、昨今はアルミに代わる新素材のポリカーボネイト製モデルの人気が高い。同社最軽量のEssential Liteシリーズは安定感とボディの適度な弾力性により、しなやかに旅の荷物を守り、快適な旅をサポートしてくれる。
シリーズ中の「Cabin」は機内持ち込み可能な37Lで2.2kgと軽量だ。伝統を引き継ぐ端正なデザイン、どの方向へも気持ちよく転がるマルチホイールシステムも同社ならでは。旅の気分を格上げする品のよいスーツケースと言えるだろう。
リモワ Essential Lite Cabin
▲出典:リモワ(URL)
サイズ:H55×W37×D23 cm
容量:37L
重量:2.2kg
カラー:グロス レッド、グロス ブルー、グロス ブラック、グロス ホワイト、グロス グリーン、グレイシャー ブルー
価格:64,900円(税込)
機内持ち込み:可(国内線100席以上)
アメリカンツーリスター(AMERICAN TOURISTER) APPLITE 3.0S
▲出典:アメリカンツーリスター(URL)
長距離移動の多いアメリカで長年にわたってスーツケースを作る1933年創業の会社。丈夫で機能的、そして美しいデザインを追求するブランドで、かつてもいち早く木製をやめてプラスチック素材を導入するなど、常に時代の変化を先取りしてきた。
世界第二の規模になった同社は現在サムソナイトの傘下にあり、販路をさらに広げている。ポリカーボネイト製スーツケースはもちろん、ファブリック素材のソフトキャリーやバックパックなども揃う。
ここで紹介するAPPLITE(アップライト) 3.0Sは最軽量クラスのソフトキャリー。ソフトタイプならではのカジュアルな雰囲気、外側前面の収納ポケットなどの利便性に加え、埋め込み型TSAナンバーロックといった基本性能も十分。拡張可能な38/40Lの容量で2.0kgという軽さが嬉しい。
アメリカンツーリスター APPLITE 3.0S スピナー55 エキスパンダブル
▲出典:アメリカンツーリスター(URL)
サイズ:H55×W36×D24/28 cm
容量:38/40L(拡張可能)
重量:2.0kg
カラー:ボデガブルー、ブラック/グリーン、ライトニンググレー
価格:19,800円(税込)
機内持ち込み:可(非拡張時。国内線100席以上)
アントラー(Antler) TITUS
▲出典:サンコー鞄(URL)
1914年にイギリスで設立され、現在はロンドンに本店を持つスーツケースブランド。古くは客船旅行や自動車旅行向けの革製トランクを作った老舗だが、現在のラインナップは時代に即したスマートなデザインで、ヨーロッパを中心に定評がある。日本ではサンコー鞄が正規輸入代理店となっており、アフターサービスも安心だ。
紹介するTITUS(タイタス)はソフトタイプでありながら衝撃を受けやすい上部・底部にはポリプロピレンを採用。ハイブリッドボディで軽さと強さを両立させている。ブラックのモノトーンな雰囲気はビジネスにも向くシックな雰囲気。TSA対応のダイヤルロックやジッパータブの造作など、細部のクオリティーにも目を見張る。30LのATIS-50は重さ約2.3kg。
アントラー TITUS ATIS-50
▲出典:サンコー鞄(URL)
サイズ:H55×W35×D23 cm
容量:30L
重量:約2.3kg
カラー:ブラック
価格:22,000円(税込)
機内持ち込み:可(国内線100席以上)
ゼロハリバートン(ZERO HALLIBURTON) GREENWICH
▲出典:ゼロハリバートン(URL)
アルミ製アタッシェが定番人気のアメリカンブランド。アポロ11号が月の石を採取し持ち帰った際のケースとしても知られ、その耐久性と優美で実用的なデザインは多くの旅人の心を掴む。
スーツケースはシックで大人な雰囲気のラインナップが多い。そんななかでも1~2泊程度の旅行に適したトローリーがここで紹介するGREENWICH(グリニッジ)。ZERO NEW YORK初のソフト素材で、機動的な静音4輪キャスターを採用している。
立ったままでも出し入れできる縦開きタイプなうえ、開けた際に中身を他人に見られにくいよう内側にカバー布があるのも特徴だ。前部オーガナイザーポケット内部にはペンホルダーや小さなポケットが備わっており、ビジネストリップでも快適に使うことができるはず。
ゼロハリバートン GREENWICH 4-Wheeled Carry-on Spinner
▲出典:セロハリバートン(URL)
サイズ:H55×W35×D25 cm
容量:37L
重量:3.0kg
カラー:ブラック、ブルー
価格:35,200円(税込)
機内持ち込み:可(国内線100席以上)
用途にぴったりのスーツケースの選び方
スーツケースの選び方は、主に以下の5点に留意するといいだろう。
・サイズの違い。旅行日数や機内持ち込みの可否
・素材の違い。ハードケースかソフトケースか
・開口部の違い。ファスナー式かフレーム式か
・鍵の種類。キーロックかダイヤルロックか
・キャスターの違い。2輪か4輪か
サイズの違い。旅行日数や機内持ち込みの可否
スーツケースのサイズは、一般的には「日数×10L」が一つの目安といわれる。旅の長短=荷物量の多少によって当然サイズは異なるわけで、多くの人が短期用と長期用の2種類を使い分けていることだろう。
特に1~3泊程度の短期用の場合、機内持ち込みができるかどうかも判断材料の一つとなる。機内に持ち込めれば到着空港でターンテーブルから荷物が出るのを待たずに済み、到着後すぐに観光や仕事に向かうことができる。
機内持ち込み可能なサイズは、国内線・国際線、各航空会社・飛行機によって異なるので、事前に必ずチェックしておきたい。通例、3辺の合計が115cm以内(30~40L前後に相当)であれば、国際線と、国内線100席以上の飛行機に持ち込めることが多い。
素材の違い。ハードケースかソフトケースか
スーツケースの素材は大きくハードとソフトの2種類に分かれる。前者は主にポリカーボネイトや炭素繊維系複合素材、アルミ合金製などで、頑丈で水濡れに強くセキュリティの安心度が高い。が、その分やや重めなこともある。
また、後者のソフトケースは主に布製で、軽くて運びやすいのが最大の利点。小さめで片開きのものが多く、中身の出し入れも容易。防水・防犯性にはやや劣るものの、機内持ち込み可能な短期旅行用の製品は特に便利だ。
開口部の違い。ファスナー式かフレーム式か
スーツケースの開口部は軽量化に貢献するファスナー式と、堅牢さが取り柄のフレーム式がある。後者のフレーム式は主に大型のハードケースに用いられるが、ファスナー式のように布地部分を切り裂かれて盗難に遭うような可能性が低く、防犯面を重視する人には向いている。
鍵の種類。シリンダーロックかダイヤルロックか
鍵を差し込んで回すシリンダーロック(キーロック)と、番号を合わせて解錠するダイヤルロックが主要2種。選択はもっぱら好みによるが、シリンダーロックは他人に開けられにくい反面、万一鍵をなくした場合に困る。ダイヤルロックはそのリスクはないものの、暗証番号を見られたりして誰かに開けられてしまう可能性も否めない。
なお、どちらのタイプも昨今はアメリカ出入国の際に便利なTSAロックに対応していることが多い。
キャスターの違い。2輪か4輪か
2輪は安定していて多少の凹凸でも進みやすいが、一方向にしか引けないため小回りが利かず不便に思うこともある。また、4輪は小回りが効くので混雑した駅や列車内でも周囲の迷惑になりにくいが、一方で、荷物が重くなるほどスーツケースを引く腕に負担がかかりがち。
以上のような項目を踏まえ、自分に合ったスーツケースを選びたい。
スーツケースの選び方に関する詳細記事はこちら。
自分に合ったスーツケースの選び方|5つのポイントをチェックしよう
機内持ち込みできるかをチェック
機内持ち込みの可否は他項でも述べた通り、重要なチェック項目だ。一般的には、国内線の100席以上の飛行機と国際線では「3辺の合計が115cm以内」、重さは10kgまでが多い。容量的には30~40L程度に相当する。機内持ち込みを考えるならこのサイズを基準とするといいだろう。
なお、国内線100席未満では3辺合計100cm以内であることが多いほか、LCCでは機内持ち込み重量が7kgまでなどと厳しいことも珍しくない。自分がよく乗る路線や航空会社を踏まえ、適したスーツケースを選びたい。
スーツケースの機内持ち込みサイズに関する記事はこちら。
機内持ち込みOKな最新スーツケース9選!規定サイズや重さを解説
最軽量スーツケースで、身も心も軽々と
昨今の科学技術の進歩に伴いスーツケースは格段に軽くなった。きちんとしたメーカーが作る製品は堅牢さを損なわないよう設計されており、往時のように旅先で突然壊れるようなことも、ほぼなくなった。
とりわけ「最軽量」の部類に入るスーツケースなら、軽量化の恩恵を存分に受けられるはず。軽くなった分だけ行動力が上がって心も軽く、旅の道具や帰りのお土産も多く詰められる……。
メリットだらけの最軽量スーツケースを旅の伴侶とし、ぜひ国内各地へ、海外へ、旅の羽を広げてほしい。
機内誌編集部が総合力で選び抜いたスーツケースのおすすめはこちら。
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