旅への扉

COFFEE & TRAVEL グアテマラ・アンティグア 火山の麓の古都と農園

文/高橋敦史 写真/MI CAFETO(現地)、高橋敦史(店舗)

南北アメリカ大陸をつないで陸地が細くくびれるあたりの中米は、グアテマラ、エルサルバドル、コスタリカ、パナマなど、世界的に名高いコーヒー産出国が連なるエリア。とりわけグアテマラのアンティグアは観光地としても魅力ある世界遺産の古都であり、質の高いコーヒーが穫れる一大産地でもある。カラフルなコロニアル様式の建築物や時計台、背後にそびえるアグア火山……。今回は、そんな風光明媚な産地を紹介しよう。

 

3つの火山に抱かれた古都と、山裾に広がるコーヒー畑

アンティグアは標高およそ1,500mの高原都市。街の象徴・アグア火山や、2018年の噴火でニュースにもなったフエゴ火山など、南と西に計3つの火山を持つ。植民地時代の1543年に首都としてひらかれたが、当地へ遷都されてきた理由と同じ「地震による被害」のために、後年、現在の首都グアテマラ・シティに都を譲る。

 
碁盤の目に整備された街の敷石の道を行くと、家並みの間に18世紀に崩れた教会がそのままの姿で現れたりして、ふと、いにしえの時代に迷い込んだ錯覚を覚えてしまう。カラフルな家並みと廃墟が混在する、不思議な街。

 
街外れには緑豊かな山裾が広がっていて、そこここにコーヒー農園がある。

 
coffeebeans

▲収穫後の選別作業。完熟豆だけを丁寧に収穫しているのでこの赤色。

 
とりわけサン セバスティアン農園や同経営のサン ミゲル農園は質の高い豆が穫れる。日本のコーヒー界の第一人者であり「コーヒーハンター」の異名を持つJosé. 川島良彰さんはサン セバスティアン農園で、コーヒーの品質についてあらためて開眼させられたという。

 
「恩師の案内で訪ねたのですが、栽培技術、水洗加工、乾燥、選別など、どれを取っても素晴らしい。全身が震えるほど感動したんです」

 
Carmen Church

▲左/旧市街のカルメン教会。廃墟の美もアンティグアの魅力。右/生豆を天日で乾燥させる。

 
1989年の初訪問以来、農園と川島さんとの付き合いは既に30年以上。そして農園は今年で130周年。「標高2,000mの高地で最高高度のコーヒーを作る」プロジェクトを提案しオーナーと共に歩んできた川島さんも、もちろん130周年の祝いの席にいた。オーナーが往時を振り返って感慨深げに発した言葉が、川島さんには忘れられないそうだ。

 
「『あのときお前を信じてよかったよ』と言われてさ。本当に嬉しかったなあ」

 

アンティグアの農園と、東京・白金台のカフェの共通項

coffeefarmer

▲緑濃いコーヒーの木に囲まれて収穫中。彼らの暮らしが豊かになることも大切だ。

 
サン セバスティアン農園と同じファジャ家が経営するサン ミゲル農園のコーヒーは、東京・白金台の「八芳園」でオリジナルブレンドとして提供されている。川島さんの会社・ミカフェートと八芳園とのコラボレーションで昨夏、実現した。

 
「本当に美味しいコーヒーをお出ししたいと思って、探していたんです」

 
そう話すのは八芳園の関本敬祐さん。川島さんと出会い、八芳園にふさわしい豆を選ぶなかで、サン ミゲル農園が候補となった。もとより有機栽培・自然栽培の野菜を求めて生産者と連携するなどSDGs(持続可能な開発目標)を大切にしている八芳園だけに、ミカフェートやサン ミゲル農園の同様の姿勢に共感したそうだ。

 
Antigua

▲左/きれいに揃った接木苗。丁寧な作業がうかがえる。右/サン セバスティアン農園内にある小・中学校。

 
「それならグアテマラに行こうよ」という川島さんの誘いで、先日、八芳園の若手スタッフ2名がはるばる現地を訪ねたそう。「自分たちがお客さまに何を提供しているのか。それを目で見て知ることはとても大切ですからね」と関本さん。

 
加えて、八芳園は今年からコーヒーの売上の一部を寄付金とすることで農園内の診療所のサポートも開始。診療所は農園労働者やその家族だけでなく、近隣の人々も無料で診るという。医療機関のない地域の人々はこうした活動にも助けられている。

 

緑豊かな日本庭園を望むスラッシュカフェ

優雅な池泉回遊式庭園を持つ八芳園といえば、結婚式や宴会利用で馴染み深い。しかし、庭園を一段高いテラス席から望めるスラッシュカフェが、外来でも気軽に利用できることは意外と知られていない。

 
HAPPOEN

▲左上/カフェは八芳園本館ロビーに隣接。ほか3点/庭園を望むテラス席をこの季節に楽しみたい。コーヒー(税サ別1,000円)はお代わり自由。

 
都心の穴場として覚えておきたいこのカフェは、芽吹きの春こそふさわしい。桜の季節が過ぎて木々が一斉に葉をつける頃、視界はグリーンいっぱいに。そんななかで味わうミカフェート監修のオリジナルブレンドに、くだんのサン ミゲル農園の豆が使われている。試験導入を経て、今では婚礼や宴会、料亭など館内すべての場所で提供中だ。

 
コーヒーらしい酸味もあるだけに全館導入にはいくぶん不安もあったというものの、結果、上品な酸味と滑らかな口当たりが評価され、「みなさん、美味しいとおっしゃってくれます」。

 
shopin

▲ツグミが遊びにくる鳥かごをイメージした店内。

 
川島さん率いるミカフェート、グアテマラのサン ミゲル農園、そして八芳園。「共通しているのは『人を大切にする』ということだと思います」と八芳園の関本さん。

 
「視察ではなく、働いている人たちに会いに行く」

 
はるばるグアテマラまで若手スタッフ二人が行った経験を、関本さんはそんな風にも表現した。二人はサン ミゲル農園で働く人やその子どもたちを思い出し、「今年もまた行きたい」と話しているそうだ。

 
高橋敦史
旅行媒体を中心に活動する編集ディレクター・紀行作家・写真家で、季刊雑誌『珈琲時間』編集長。移動編集社代表。温泉旅行やバックパッカーからリゾート、クルーズまであらゆる旅を撮って書く。昨今はバンライフにも目覚め、移動編集「車」を購入。

 

八芳園 スラッシュカフェ
電話:03-3443-3105(10:00~21:30、土・日・祝は9:00~21:30)
住所:東京都港区白金台1-1-1
営業時間:11:00~21:30(フード19:30L.O.)
     土・日・祝はモーニング8:00~11:00、ランチ11:00~14:30
     ティータイム14:30~17:00、ディナー17:00~(フード19:30L.O.)
休日:なし(夏季休業・年末年始休業あり)
備考:全席禁煙
東京メトロ南北線・都営三田線白金台駅から徒歩約1分
URL:www.happo-en.com/restaurant/thrushcafe/

 
 

関連記事

EDITORS RECOMMEND〜編集部のおすすめ〜

キーワードで記事を探す