大きな窓から差し込む自然光が、空間を柔らかく包み込む。センサーによって自動制御された窓の隙間から、心地よい風が吹き込んでくる。ビルのなかにいるのに、屋外で過ごしているような不思議な空間。それが「ブリット・センター」の第一印象だった。
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BULLITT CENTER 世界を変えるグリーンビルディング
プロジェクトを率いるのは、世界的な環境イベント「アース・デイ」の創設者で「ブリット財団」代表のデニス・ヘイズさんだ。同氏が、シアトルで同プロジェクトに取り組んだ理由とは何か。
「シアトルのあるアメリカ太平洋岸北西部は、一般的に教育水準が高く、政治的にも先進的。自然環境への関心も高く、環境分野において世界で最も優れた大学の一つであるワシントン大学もある。シアトルという街は、このようなイノベーティブな挑戦にふさわしい場所なのです」とヘイズさん。
エネルギーの自給はもちろん、商業ビルとしての経済性を担保していることもブリット・センターの特長だ。総工費は約 3250万ドルと一般的なビルに比べて約 23%割高というが、建物の耐用年数がおよそ 250年と長いこととを考えれば、経済的持続性も十分に実現されている。
また、あえて既成品だけを組み合わせてビルを造ることで、現在の技術と素材で次世代建築を実現できることを証明したこともブリット・センターの功績。同ビルは環境に配慮した厳格な建築認証プログラムである「リビング・ビルディング・チャレンジ」の認証を受けているが、世界各地で同様のプロジェクトが 800件以上進行中だという。
「“リビング・ビルディング(生きた建築)”には、土地に合ったデザインが必要なので、シアトルのブリット・センターをそのまま持っていっても機能しません。けれど、メルボルンやシカゴ、東京、ロシアなど、それぞれの環境に適した最初の“リビング・ビルディング”が生まれれば、その後の変化は大きなものになるでしょう」とヘイズさんは話す。
THE SEATTLE PUBLIC LIBRARY 図書館に見る新しい“公共”の形
その場所では、誰もがリラックスした表情で思い思いの時間を楽しんでいた。ひし形のフレームとガラスで構成された外壁からは陽光がこぼれ落ち、館内には人々の足音や話し声が混じり合った心地いいざわめきが響く。
ここは、ダウンタウンに建つ「シアトル中央図書館」。雨が多いことから“読書家の街”として知られるシアトルの人々に愛される図書館だ。
オランダ出身の世界的建築家レム・コールハースとシアトルの建築事務所「LMN」が設計を手掛けた図書館は 11のフロアで構成されていた。 1日5000人もの人々が訪れるという館内を歩けば、6階から9 階にかけて螺旋状に書庫が連なる「ブック・スパイラル」や、絵本や児童書が並ぶ1階の「キッズ」スペース、大きな吹き抜けの下に本棚やカフェ、ギフトショップなどが配された「リビングルーム」など個性の異なる空間が現れる。館内では英語やコンピューターを学ぶプログラムやイベントも行われており、カフェには楽しそうに談笑するグループの姿も。ここはシアトルの人々にとって、図書館であると同時に、学びの場であり、社交場なのだ。
「シアトル中央図書館は、すべての人に開かれた公共の場。もちろん入館をチェックすることもありませんし、どんなバックグラウンドを持つ人でも利用できます。ここは、誰もが快適に時間を過ごせるサードプレイスのような場所なのです」とは、同館広報担当のアンドラ・アディソンさん。ライフスタイルの多様化が進む今、「図書館という空間が持つ“神聖な価値”はより高まっている」とアディソンさんは続ける。
「数年前にNFLチームの『シアトル・シーホークス』がスーパーボウルに出場した際、私たちは館内の講堂で参加無料のパブリックビューイングを企画しました。当初はどのような人々が来てくれるのかはわかりませんでしたが、ゲームの当日には、ダウンタウンの弁護士やホームレスの人々、子どもの保護者、移民や難民、介助動物を連れた利用者など実に多様な人々が図書館に集まり、この素晴らしい体験を共有することができたのです」
シアトル中央図書館が体現するもの。それは“公共”という概念の新たな在り方なのだろう。
革新的なビジネスやカルチャーが生まれるシアトル。この街を旅する喜びは、新しい“価値観”に触れられることなのだ、とあらためて思う。
Information about Seattle
Embassy Suites by Hilton Seattle Downtown Pioneer Square
新たなテクノロジーが次々と生まれるシアトルには、最先端の技術に触れられるホテルもある。歴史的建造物が建ち並ぶシアトル発祥の地、パイオニア・スクエアの一角に位置する「エンバシー・スイーツ・バイ・ヒルトン・シアトル・ダウンタウン・パイオニア・スクエア」の客室には、人工知能搭載のスマートスピーカー「アマゾン・エコー」が備えられており、スピーカーに話し掛けるだけでモーニングコールや照明の調節などが可能だ。スタイリッシュで広々とした客室のデザインも魅力。「シアトル・マリナーズ」の本拠地球場へのアクセスもよく、シアトル観光の拠点にお勧めだ。
電話:1-206-859-4400
住所:255 S King St., Seattle
営業時間:17:00〜23:30(L.O.)
営業時期:詳細はウェブサイトにて要確認。
URL:embassysuites3.hilton.com/en/hotels/washington/embassy-suites-by-hilton-seattledowntown-pioneer-square-SEAPSES/index.html
キンプトン・パラディアン・ホテル Kimpton Palladian Hotel
パイク・プレイス・マーケットから徒歩約 5 分と好アクセスの 4 つ星ホテル。1 階には、シーフードを提供するレストランを併設する。
電話:1-206-448-1111
住所:2000 2nd Ave., Seattle
URL:www.palladianhotel.com
パイク・プレイス・マーケット Pike Place Market
100を優に超える、生鮮食料品店や雑貨店、レストラン・カフェが集う活気のある市場。海
側に増設された店舗スペースも必見。
電話:1-206-682-7453
住所:1st Ave., & Pike St., Seattle
URL:www.pikeplacemarket.org
スターバックスコーヒー パイクプレイス店 PIKE PLACE STARBUCKS
パイク・プレイス・マーケットに建つ 1 号店。開店当時のロゴをあしらったマグカップや
タンブラーといった1号店限定アイテムが人気。
電話:1-206-448-8762
住所:1912 Pike Place, Seattle
URL:www.starbucks.com
ザ・スフィアズ the spheres
アマゾン本社ビルの前に建つ、アマゾン社員専用の植物園型のワークスペース。本社見学
ツアーへの申し込みで 1階展示室以外にも入室可。
〔アマゾン本社見学ツアー〕予約ウェブサイト
URL:www.seattlespheres.com/the-spheres-weekend-public-visits
アマゾン・ゴー amazon go
2018年1月に1店目をオープン以来、無人ストアとして世界中の注目を集める。事前にア
プリ登録を済ませれば、旅行者も購入可能。
〔7th & Blanchard 店〕
住所:2131 7th Ave., Seattle
URL:www.amazon.com/b?ie=UTF8&node=16008589011
シアトル中央図書館 The Seattle Public Library
幾何学的な外観が目をひく、シアトルの新たな観光名所の一つ。開放的な空間や、フロア
ごとに異なるインテリアデザインも魅力。
電話:1-206-448-8762
住所:1912 Pike Place, Seattle
URL:www.spl.org
ロッククリーク・シーフード&スピリッツ Rockcreek Seafood & Spirits
蟹や牡蠣といった西海岸のシーフードを中心に提供するレストラン。毎日獲れたての食材
を使った料理の数々で地元での人気が高い。
電話:1-206-557-7532
住所:4300 Fremont Ave., N, Seattle
URL:rockcreekseattle.com
シアトルへのアクセス
東京(成田)から JAL 直行便がシアトル・タコマ国際空港へ毎日運航。
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