日に日に空気が秋めいて、空が澄んでくる9月。9月といえば十五夜やお月見といった行事が知られるが、今回は「中秋の名月」について深掘りしてご紹介したい。いつもと違った中秋の名月の日の過ごし方のヒントが見つかるかもしれない。
本記事では、
・中秋の名月とは?2024年はいつ?
・十五夜との違いは?
・中秋の名月のおすすめの過ごし方
などを紹介する。
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目次
秋の月が美しい理由は? 中秋の名月の由来
月を眺めて、お団子を食べる。今の日本ではそんなイメージが浸透している中秋の名月だが、もとは中国の風習。日本へは、平安時代に伝わったとされる。
中秋とは、旧暦の8月15日を指す。旧暦では7~9月を秋としているため、8月15日はちょうど秋の真ん中となる。またその頃は1年を通して最も月が美しい時期であるとされたことから、平安時代の貴族たちは、中秋の名月に月を眺めて和歌を詠む「観月の宴」を開いて楽しんだ。
月は季節にかかわらずいつでも見られるのに、なぜ昔から秋の月は美しいといわれるのか。それは、秋の空気と月の適度な高さが関係しているという。秋の空気は、水分量が春や夏に比べて少なく乾燥している。そのため、澄んだ空気が月をくっきりと夜空に映し出すのだ。
また、月は冬に近づくほど空の高い位置を通り、夏は低い位置を通る。春は地上の埃などで月本来の明るさが霞んでしまう。
そのため、空気の水分量、大気の状況や月の高さなど、月が最も美しく見える条件が揃う秋こそ、月見にふさわしいといわれてきたのである。
2024年の中秋の名月は9月17日
中秋の名月は、現在では9月から10月となるので、風が心地よく虫の声が聞こえはじめる頃。
今年、2024年の中秋の名月は9月17日の火曜日となり、秋分の日(9月22日)の5日前。ちなみに2022年は9月10日、2023年は9月29日と、実は年によって2週間以上も開きがある。これは、中秋の名月が旧暦をもとに決められていることに起因する。
なお、「秋分の日」について詳しくはこちらの記事をご参照いただきたい。
秋分の日とは?2024年は9月22日|意味や行事食などを紹介
「十五夜」とは? 中秋の名月との関係は?
中秋の名月を、「十五夜」と聞き慣れている方も多いだろう。月は、新月から満月まで15日かけて少しずつ満ちていくことから、旧暦では新月の日から数えて15日目の夜を十五夜と呼ぶようになった。
十五夜は秋に限ったものではなく、旧暦15日の夜すべてを言うのである。一般的には十五夜と中秋の名月は同等の意味で捉えられているが、本来は旧暦8月の十五夜を中秋の名月と呼ぶのである。
中秋の名月の過ごし方
日々忙しく過ごす現代人。月を見上げる余裕はないかもしれない。祝日でもない中秋の名月の日は、普段と変わりなく1日を過ごしてしまいがちでもある。今年の中秋の名月は週末の金曜日。休み前のひとときにゆっくりとお月見の準備をして、季節の移ろいを感じてみるのはどうだろうか。
中秋の名月といえば、「月見団子」
お月見のお供え物といえば、いの一番に思い浮かべるのが多い「月見団子」。供え物をするのは中秋の名月とともに、平安時代に中国から伝わった風習といわれている。中国では伝統菓子である月餅を供える風習があるが、日本では芋類や豆類を供え、形を変え今の月見団子になったそうだ。
その昔、農民たちは月の満ち欠けで時の流れを計り、季節の変化を感じ取って農作業をしていた。そんな農民たちにとって、秋は作物の収穫期。月が満ちた姿を模した丸い団子は、豊作への祈りや感謝はもちろん、物事の結実や幸福の象徴ともされ、供えた後の団子を食べることで健康と幸福を得られると考えられている。
月がよく見える場所に台を置き、十五夜にちなみ15個の団子を大皿にうず高く盛るのが昔ながらの伝統的な供え方。山のような形に団子を積むのは、一番上の団子が霊界に通じると信じられていたからともいわれている。
中秋の名月が「芋名月(いもめいげつ)」とも呼ばれる由縁
中秋の名月は、サトイモやサツマイモの収穫時期に当たることから、「芋名月」とも呼ばれる。豊作を祝う祭りのような意味も込められていた。サトイモなどの収穫物を供える風習を残す地域も多く存在する。
関西では、関東のような丸い月見団子ではなく、先を少し尖らせた餅をこしあんで包んだサトイモのような形の団子が一般的だ。
ブドウのツルが人と神様をつないでくれる
秋の果物の代表格でもある、ブドウ。中秋の名月のイメージはあまりないかもしれないが、収穫祈願を込めて農作物として、ブドウを供えることもある。理由は、ブドウなどのツル植物は月と人との結びつきを強める縁起のよい食べ物だと考えられているからだ。
十五夜の定番、ススキは神を宿す
団子と並んで中秋の名月のお供え物の定番は、ススキだろう。日本全国に広く分布しており、身近な植物でもあるススキ。ススキをお月見に飾るのには、身近だからというだけではなく歴とした理由がある。
古来日本では、背の高い稲穂は神様が降り立つ「依り代(よりしろ)」だと信じられてきた。そのため神様へのお供え物として米や稲穂をよく用いたが、中秋の名月の時期はまだ穂が実る前である。それで、形が似ているススキを稲穂の代わりに供えたことが風習の起源だといわれている。
またススキには邪気を払う力があると考えられており、中秋の名月のススキには、災いなどから収穫物を守り、次の年の豊作を願うという意味も込められている。
地域によっては、その1年を災いなく過ごすことができるように、お供えしたススキを捨てずに庭や水田に立てたり軒先に吊ったりする風習がある。
月が美しい夜に、月の神「月読命(つくよみのみこと)」に会いに行く
中秋の名月は、月を単に美しいものとして観賞するだけではなく、神として祀る側面があることは、ススキを依り代として飾ることからもわかる。
月の神は、「月読命(つくよみのみこと)」として日本神話にも度々登場するほど古くからその存在が信じられ、祀られている神社もいくつか存在する。中秋の名月の日を、月を祀る神社で過ごすというのもまた一興ではないか。
月の神様が祀られている神社、長崎県壱岐島 「月讀神社(つきよみじんじゃ)」
長崎県壱岐島。木々が生い茂る深い森の中に、月読命を御祭神とする「月讀神社」は静かに鎮座する。日本に伝存する最古の正史である『日本書紀』にも登場する月読命は、太陽の神「天照大御神(あまてらすおおみかみ)」の弟神にあたり、農業や漁業にとって重要な季節の移り変わりを月の満ち欠けで知らせてくれる神として崇められていたという。
月讀神社は、華やかさこそないものの、パワースポットとして観光客の人気も高い神社。桧林の中に佇む姿は厳かで、安産や健康、商売繁盛など幅広くご利益があるそうだ。
また全国の月讀神社と名のつく神社の元宮でもあり、「神道の発祥の地」ともされる。由緒正しく歴史のある神社として、地元民からも愛され親しまれている。
月讀神社
住所:長崎県壱岐市芦辺町国分東触464
電話:0920-45-4145
URL:http://tsukiyomijinja.com/
月を愛でる、「松尾大社(京都)」の「観月祭」
壱岐島の月讀神社から月神を分霊し祀ったのが、京都「松尾大社」の摂社である「月讀神社」だ。ちなみに、松尾大社では、毎年中秋の名月に観月祭が開催されている。尺八や和太鼓の奉納演奏に俳句大会など、昔ながらの月を愛でる風流なイベントだ。月見饅頭や樽酒が無料でふるまわれ、子どもからお年寄りまですべての世代が楽しめる。
松尾大社
住所:京都府京都市西京区嵐山宮町3
電話:075-871-5016
URL:www.matsunoo.or.jp/
神様に感謝し、健康や発展を願う中秋の名月
平安時代に中国から伝わり、江戸時代には庶民の生活にも溶け込んでいた中秋の名月。しかし、現在では毎年決まった日にちではないことや、生活様式と合わない部分があることなどから、どことなく縁遠い風習となってしまったようにも感じてならない。
1年に1度の中秋の名月には少し手間をかけて、昔ながらのお月見を体験してみるのもよい機会ではないだろうか。秋の心地よい夜風に当たりながら眺める中秋の名月に、さて、どんな想いを馳せよう。
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