とっておきの話

JALパイロットはどんな靴を履いているの?【キャプテンの航空教室】

文/三上欣之 イラスト/高橋潤

一度だけ、「パイロットはどんな靴を履いているの?」と聞かれたことがあります。皆さまはどのような靴を想像されますか? 革靴が主流ではありますが、実はパイロット専用の靴はありません。今回はそんな誰も触れないであろう、パイロットの足元について語ろうと思います。

 
その前に、パイロットの制服の歴史をひもといていきましょう。現在のように、機長の制服の袖に4本線を入れたダブルスーツと制帽を着用するスタイルを取り入れたのは、アメリカのパンアメリカン航空が始まりといわれています。今から約80年前、それまではアーミールックの軽装でしたが、お客さまに安心感を与えられるよう、凜とした装いに変化したそうです。その際に、足元もブーツから現在の革靴に変わっていったと考えられています。

 
もちろん、見た目だけでなく操縦のしやすさも重要です。飛行機の操縦というと、両手で操縦桿とスラストレバーを操作しているイメージが強いかと思いますが、実は足でも重要な装置を操作しています。離着陸時に進行方向を補正したり、地上走行中にブレーキの役割を果たすラダーペダルは、足で操縦します。日本では滑らないよう手にグローブを着けていますが、私は靴も滑らないよう、ラバーソールのものを好んで履いています。フライト前に飛行機の外部点検を行うのですが、ラバーソールだと雨や雪の日でも滑りにくいので大変重宝しています。

 
近年は、より快適性が高く洗練されたラバーソールの革靴も増えました。ほかにもJALグループの新しい航空会社ZIPAIR Tokyoでは、ドレススニーカーと呼ばれる、ビジネスルックにも対応するスニーカーをパイロットの靴として採用しています。今後、アパレルブランドやシューズメーカーと共同で、パイロット目線を取り入れたビジネスシューズが開発されたら面白いなとひそかに思っています。

 
最後になりますが、沖縄を中心に運航する日本トランスオーシャン航空では、6月からの夏期限定で、パイロットもかりゆしウェアを着用することになりました。各パイロットの靴の違いとともに、従来のパイロットの制服要素を残したかりゆしウェアに、ぜひ注目していただけると嬉しいです。

 
快適な空の旅をご提供できるよう、本日も靴と操縦の腕を磨き、皆さまのご搭乗を心よりお待ちしております。

 
キャプテン
三上欣之 Yoshiyuki Mikami
日本トランスオーシャン航空
ボーイング737-800型機
出身地:福井県
趣味:サーフィン、トライアスロン
座右の銘:Less is more

 

(SKYWARD2020年6月号掲載)
※記載の情報は2020年6月現在のものであり、実際の情報とは異なる場合がございます。掲載された内容による損害等については、一切の責任を負いかねますのでご了承ください
※最新の運航状況はJAL Webサイトをご確認ください。

 
 

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