とっておきの話

飛行機が運んでいるモノって何?【地上のお仕事図鑑】

文/高野洋介

飛行機の下半分を占める貨物室には、お客さまの手荷物やペット以外に、何が載っているかご存じですか? 展覧会で見られる絵画、演奏会で使われる楽器、お披露目前の新車など、付加価値の高い「特殊貨物」が積み込まれていることがしばしばあります。一つのコンテナに数億円の価値を持つ貨物が入っていることも!

 
蓄冷材を敷き詰めたコンテナ

▲蓄冷材を敷き詰めたコンテナでは、内部を2~8度または15~25度に保った状態での輸送が可能です。現在、改良型のコンテナも開発中。

 
なかでも、私が輸送を担当する医薬品は特殊貨物の主力商品です。ただ、ひと言に医薬品といっても、扱うのは市販の錠剤ではなく、抗がん剤や抗リウマチ剤の新薬、実用化前の治験薬など。液剤が多く、一貫した定温状態での管理が重要となります。医薬品は人の命をつなぐ大切なもので、それを必要とする方々が必ずいらっしゃいます。最先端の医療を輸送で支えていると自負して仕事に取り組んでいます。

 
コンテナの温度チェック

▲大型機では約30個のコンテナが積み込まれますが、一つ一つのコンテナの温度チェック、ダメージチェックは常に欠かせません。

 
医薬品の輸送計画などのほか、輸送に使われる定温コンテナ(JAL CC5)の独自開発も行っています。冷却に電気を使わない、つまり物理的に故障することがないコンテナを作るために、蓄冷材と断熱材を使って保冷する仕組みを輸送用機器メーカーと共同で開発しました。特に大変だったのは、真冬に貨物ターミナルの保冷庫に入り、蓄冷材の性能を分析するためのデータ取りをした時。マイナス20度の保冷庫のなかは本当に寒かったです……。それでも、これらの努力の積み重ねが実り、ある製薬会社から定期運送で使いたいと声を掛けられた時は、苦労して育てた自分の子どもが巣立っていく気持ちになりましたね(笑)。 特殊貨物輸送のノウハウがあるJALだからこそできるサービスを、今後も追求していきたいです。

 
飛行機の下半分には、貨物と共にお客さまのさまざまな夢や希望が積み込まれています。 皆さまもご搭乗の際には、足元に広がる世界を想像してみてはいかがでしょうか。

 
コンテナを運ぶトラック

▲製薬会社のご要望をヒアリング中。医薬品の量や輸送時間、温度に応じた適切な器材の選定を含め、最適な輸送プランをご提案しています。

 
mr.takano
高野洋介 Yosuke Takano
JAL
貨物郵便本部 国際路線室
出身地:神奈川県
趣味:スキー

 

(SKYWARD2018年11月号掲載)
※記載の情報は2018年11月現在のものであり、実際の情報とは異なる場合がございます。掲載された内容による損害等については、一切の責任を負いかねますのでご了承ください。

 
 

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