それが美しいことは、わかりきっている。それでも人は、どうしようもなく惹かれてしまう。
名勝や景勝地とは、そういった類いのもので、南仏ニースも例外ではない。ここに来たからには、かの有名な海沿いの遊歩道をあてもなくぶらぶらと歩きたいし(プロムナード・デ・ザングレという立派な名前がある)、マルシェで麦わら帽子や市場かごを買ってみたりしたくなる。お決まりのコースだけれど、“王道”といわれるものはやっぱり心地いいのだ。
そんなニースの“王道”の眺めは、旧市街の東にそびえる丘の上から。地元の人たちは、ここを「シャトー(お城)」と呼んでいる。なぜかって? 紀元前の遥か昔、ニースが「ニカイア」という名の交易都市だった時代に、この丘には城砦があったから。
「お城のほうに登ってみませんか?」
太陽が西に傾き、風景が少しずつあたたかな色合いを帯びてくるなか、丘の頂上を目指して石段を上がる。一帯は城砦公園として整備されていて、いくつかのビューポイントに加え、今は大がかりな滝だってある。そして、期待通りの風景が眼の前に開ける。まさに絵画のように。
なだらかにカーブした海岸線とニースの街並み。日が暮れるにつれて刻々と変化する、空と海の色合い。期待通り? いえいえ、期待以上でしょう。あらがいようのないニースの魅力を、機内誌の表紙にのせてお届けしました。
ニースへのアクセス
東京(羽田)からパリ・シャルル・ド・ゴール国際空港までJAL直行便が毎日運航。パリでコードシェア便に乗り継ぎ、ニース・コート・ダジュール国際空港へ。空港から市内へ車で約30分。
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