旅への扉

ペルー 天空を駆ける豪華列車 [Vol.2]

文/鈴木博美 撮影/Ryoichi Sato

≪ Vol.1へ戻る

 
列車は一晩かけてアンデスの山間部を走り抜け、雪解け水を湛えたチチカカ湖に辿り着いた。標高は約3800m。富士山の頂よりも高い所にある湖だ。

 

空よりも碧い湖で迎える朝 インカの民の島へ

アンデアン・エクスプローラーでは、湖上で生活を営むインカの民に会いにいくプログラムが組まれている。湖畔の街プーノからボートに乗り込み、およそ20分。最初に訪れたウロス島は、この辺りでは一番古い民族・ウロ族が暮らす。島といってもトトラと呼ばれる葦に似た植物を積み上げた簡易な浮島だ。トトラの根の塊をブロック状に裁断し、その上に若いトトラを積み上げていく。トトラの茎には無数の空気穴が開いていて、それが浮力の源となるのだ。現在も大小あわせて105の浮島で生活が続けられている。

 
「暮らしに必要なものは何でもトトラで加工できます。船も造るし、ベッドも帽子も作る。堆肥にして畑もできる。浮島は家族が増えればトトラを足して面積を広げます。1軒分を切り離して、よその島と結合するのも簡単ですよ」と、島の家長が教えてくれた。

 
Titicaca

▲左/タキーレ島からチチカカ湖を望む。湖の面積は琵琶湖の約12倍。伝説によると、チチカカ湖に浮かぶ島に、太陽の神が初代インカ皇帝を遣わしたとされる。右/タキーレ島の女性。華やかな民族衣装が強い日差しに映える。

 
ウロス島からさらにボートで90分ほど。次は湖の西に浮かぶ孤島タキーレだ。この島には、およそ2000人のケチュア族が自給自足に近い暮らしを今も営んでいる。インカ時代から続く段々畑が島を覆い、羊たちが碧い湖をバックに草を食んでいる。紺碧の空と湖。遠くに見える純白の雪に覆われたボリビアの山の清々しい景色に心が洗われる。

 
Taquile

▲タキーレ島の人々は昔から羊を飼い、糸を紡いできた。

 
この島は1950年代まで本土との交流をほとんど持たなかったことから、独特の生活様式を今に残すことになった。主要産物は織物と編み物。広場では、糸を紡ぐ女性たちに交じり、編み物をする男性の姿も見られる。島の人々は歩きながらでも、井戸端会議中でも編む手を休めない。親から子へ連綿と受け継がれてきた生活慣習と織物技術は、ユネスコの無形文化遺産にも登録されている。インカ時代からほとんど変わることのない島の人々の営み。限られた資源を最大限に生かし、必要なものだけで暮らす生き方から、学ぶべきことは多い。

 
Vol.3へつづく

 

 

Information about Peru

走るラグジュアリーホテル

ベルモンド アンデアン・エクスプローラー Belmond Andean Explorer
Belmond Andean Explorer
オールインクルーシブの豪華クルーズトレイン。4つのルートがあり、今回ご紹介したのは「ANDEAN PLAINS & ISLANDS OF DISCOVERY」。バロック建築が美しいアレキパを日没と共に出発し、チチカカ湖、高原地帯を経て、古代インカ帝国の首都クスコへ向かう2泊3日のコースだ。ほか、クスコ―プーノ間の1泊2日コース、クスコ―チチカカ湖―アレキパを2泊3日で巡るコースもある。

 
 

コンドルの谷の山岳リゾート

ベルモンド ラス・カシータス Belmond Las Casitas
BelmondLasCasitas
緑豊かなコルカ渓谷にひっそりと佇む20棟のバンガローは、すべてプライベートプール付き。コンドルウォッチング、アルパカフィーディング、ペルー伝統料理教室など、アクティビティーも豊富。
住所:Parque Curiña s/n Yanque, Arequipa

 
 

クスコ旧市街に憩う

ベルモンド パラシオ・ナザレナス Belmond Palacio Nazarenas
BelmondPalacioNazarenas
かつての宮殿と僧院を数年かけて修復した、クスコ有数の高級ホテル。スイート55室からなり、24時間バトラー・サービスを完備。アルマス広場のすぐ裏手に位置し、街歩きの拠点に最適だ。
住所:Calle Plazoleta Nazarenas 223, Cuzco

 

ベルモンドについての問い合わせ・予約
電話:0066-3381-3732
URL: www.belmond.com/ja/

 
 
ミル・セントロ MIL Centro
リマのモダンペルー料理レストラン「セントラル」を営む料理人ヴィルヒリオ・マルティネス氏による、最新プロジェクト。
電話:51-926-948-088
住所:Via a Moray, Maras
URL:milcentro.pe

 
 
ラ・ベニータ La Benita
シェフが母親から受け継ぐアレキパ郷土料理と、インカの食材を使った実験的な料理の両方が楽しめるレストラン。
電話:51-972-348-929
住所:Plaza Principal 114 Characato, Arequipa

 

ペルーへのアクセス

peruaccess
東京(成田)、大阪(関西)からアメリカ・ロサンゼルス国際空港へJAL直行便が毎日運航。ロサンゼルスからLATAM航空とのコードシェア便でリマのホルヘ・チャベス国際空港へ。リマで乗り継ぎ、アレキパ、クスコへ。ほか、羽田、成田などからJAL 直行便で、ジョン・F・ケネディ国際空港または、ダラス・フォートワース国際空港を経由する行き方も。
取材協力/ペルー政府観光庁 www.peru.travel/jp

 

(SKYWARD2019年4月号掲載)
※記載の情報は2019年4月現在のものであり、実際の情報とは異なる場合がございます。掲載された内容による損害等については、一切の責任を負いかねますのでご了承ください。

 
 

関連記事

EDITORS RECOMMEND~編集部のおすすめ~

キーワードで記事を探す