旅への扉

ペルー 天空を駆ける豪華列車 [Vol.3]

文/鈴木博美 撮影/Ryoichi Sato

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「お味はいかがですか?」

 
太陽が地平線に沈む頃、食堂車では専任シェフによる美しく繊細な料理の数々がテーブルを彩る。本日はゴートチーズを包んだトルテリーニのコンソメスープ、ビーフテンダーロインとパンプキンクリーム、紫トウモロコシのカスタード、イチゴのローストとパイナップル、カモミールティー。列車の揺れが伴うなかで美しく美味しい料理を提供するには、地上とは異なる工夫と技術が必要だろう。

 

天空の高原を駆ける優雅なる時間

diningcar

▲食堂車での飲食代もすべてツアー料金に含まれる。料理は体に優しい味わいで、高所により食欲が低下していても、ぺろりと平らげてしまう。

 
「列車に乗ること自体も楽しいですが、土地の食材を使った料理にも期待していただきたい。奥深いペルーの魅力を伝えたいという思いから生まれた特別なこの旅が、いつまでも心に残るよう、皆さまに最高の体験を味わっていただくことが私たちクルー50名の楽しみです」。各国のベルモンドホテルをはじめ、クスコ─マチュピチュ間を走るハイラム・ビンガム号などで約20年におよぶ経験を重ね、2017年の運行開始以来ジェネラルマネジャーとして同乗するハビエル・カラヴィラ氏は話す。

 
Belmond Andean Explorer

▲ベルモンド アンデアン・エクスプローラーの客室は、クローゼット、シャワーにトイレ、そしてバスアメニティーを完備。

 
最終日は、チチカカ湖から続く大平原アルティプラーノをさらに北上し、ウルバンバ川に沿ってクスコを目指す。この一帯は冷涼で雨が少ないため背の高い樹木は育たず、赤茶けた山と大地が支配する。アンデスの原風景が車窓を流れる、アンデアン・エクスプローラーのハイライトの一つだ。時折見えるインディヘナたちの農村風景は、ここが標高4000mであることを忘れてしまいそうなくらい長閑で平和だ。

 
景色を楽しむ乗客の会話がラウンジカーで弾んでいる。ドイツ人親子の男二人旅、リマ在住のアメリカ人青年、新婚旅行のフランス人カップル……旅のスタイルはさまざまだが、限られた空間で数日を共に過ごすクルーズトレインでは、ゲスト同士の距離が一層縮まる。これも列車の旅の醍醐味といえよう。

 
「この川はマチュピチュを越えてアマゾン川に合流するんだよ」

 
ドイツから来た少年が得意げに教えてくれた。少年はラウンジカーから続くオブザベーションデッキ(展望車)で、流れる景色を誰よりも楽しんでいた。

 
rounge

▲ラウンジ車両のバーカウンターでは、ペルーの蒸留酒ピスコを使ったカクテルなどの楽しみも。右/アンデアン・エクスプローラーの最後尾にあるオープンデッキ。

 
最後の停車地、インカの神殿跡が残るラクチ遺跡を訪ねたら、クスコまでは残すところ100㎞。列車は並走していたウルバンバ川を離れ、クスコ市街地へと入っていく。アンデス山脈を進む冒険の旅がそろそろ終わろうとしている。

 
Vol.4へつづく

 

 

Information about Peru

走るラグジュアリーホテル

ベルモンド アンデアン・エクスプローラー Belmond Andean Explorer
Belmond Andean Explorer
オールインクルーシブの豪華クルーズトレイン。4つのルートがあり、今回ご紹介したのは「ANDEAN PLAINS & ISLANDS OF DISCOVERY」。バロック建築が美しいアレキパを日没と共に出発し、チチカカ湖、高原地帯を経て、古代インカ帝国の首都クスコへ向かう2泊3日のコースだ。ほか、クスコ―プーノ間の1泊2日コース、クスコ―チチカカ湖―アレキパを2泊3日で巡るコースもある。

 
 

コンドルの谷の山岳リゾート

ベルモンド ラス・カシータス Belmond Las Casitas
BelmondLasCasitas
緑豊かなコルカ渓谷にひっそりと佇む20棟のバンガローは、すべてプライベートプール付き。コンドルウォッチング、アルパカフィーディング、ペルー伝統料理教室など、アクティビティーも豊富。
住所:Parque Curiña s/n Yanque, Arequipa

 
 

クスコ旧市街に憩う

ベルモンド パラシオ・ナザレナス Belmond Palacio Nazarenas
BelmondPalacioNazarenas
かつての宮殿と僧院を数年かけて修復した、クスコ有数の高級ホテル。スイート55室からなり、24時間バトラー・サービスを完備。アルマス広場のすぐ裏手に位置し、街歩きの拠点に最適だ。
住所:Calle Plazoleta Nazarenas 223, Cuzco

 

ベルモンドについての問い合わせ・予約
電話:0066-3381-3732
URL: www.belmond.com/ja/

 
 
ミル・セントロ MIL Centro
リマのモダンペルー料理レストラン「セントラル」を営む料理人ヴィルヒリオ・マルティネス氏による、最新プロジェクト。
電話:51-926-948-088
住所:Via a Moray, Maras
URL:milcentro.pe

 
 
ラ・ベニータ La Benita
シェフが母親から受け継ぐアレキパ郷土料理と、インカの食材を使った実験的な料理の両方が楽しめるレストラン。
電話:51-972-348-929
住所:Plaza Principal 114 Characato, Arequipa

 

ペルーへのアクセス

peruaccess
東京(成田)、大阪(関西)からアメリカ・ロサンゼルス国際空港へJAL直行便が毎日運航。ロサンゼルスからLATAM航空とのコードシェア便でリマのホルヘ・チャベス国際空港へ。リマで乗り継ぎ、アレキパ、クスコへ。ほか、羽田、成田などからJAL 直行便で、ジョン・F・ケネディ国際空港または、ダラス・フォートワース国際空港を経由する行き方も。
取材協力/ペルー政府観光庁 www.peru.travel/jp

 

(SKYWARD2019年4月号掲載)
※記載の情報は2019年4月現在のものであり、実際の情報とは異なる場合がございます。掲載された内容による損害等については、一切の責任を負いかねますのでご了承ください。

 
 

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