旅への扉

ペルー 天空を駆ける豪華列車 [Vol.4]

文/鈴木博美 撮影/Ryoichi Sato

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クスコは、標高約3400mに築かれたインカ帝国の都。ケチュア語で「ヘソ」を意味するこの街はインカ道で各地と結ばれ、帝国の中心として隆盛を極めた。しかし16世紀に入り、海を渡ってきたスペインの征服者により帝国は崩壊する。彼らは神殿や宮殿などを徹底的に破壊し、金銀財宝を略奪すると、残った礎石の上に教会などを建て、今あるクスコへと再建した。クスコはインカ帝国の精巧な石組みと、スペインのコロニアル建築という二つの大国の文化が融合する独特な街として、ユネスコの世界遺産に登録されている。

 

インカ帝国の残り香と美味なる谷

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征服者たちがインカから持ち帰ったものは黄金だけではなかった。それがジャガイモやトウモロコシといった、誰もが知る南米原産の食材だ。クスコからマチュピチュへ続く「聖なる谷」の斜面には、アンデネスと呼ばれる段々畑が作られ、高低差や温度差を利用して、ジャガイモ、トウモロコシ、トマトなどの作物が同時に栽培されていた。農作物の安定供給は人々の暮らしを豊かにし、これにより得られた労働力が、インカ帝国を数世代で築いた要因の一つだと考えられている。

 
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▲左/標高3500mにあるインカの“農業試験場”、モライ遺跡。右/「ミル・セントロ」のコースより。ジャガイモの一品。

 
聖なる谷には、円形状の巨大な窪み「モライ遺跡」が残る。段々畑の高低差は100m、最上部と最深部の気温差は15℃になり、異なった温度帯で複数の農作物を実験的に育て、品種改良の研究をしていた可能性が高いという。

 
そんな“農業試験場”を望む高台にあるのが、ペルーを代表するスターシェフ、ヴィルヒリオ・マルティネス氏が手掛ける食物研究所兼レストランだ。提供するのは「HIGH ALTITUDE ECOSYSTEMS」という全8品のコース料理のみ。アンデスの高地でさまざまな食材を育んだインカの民に敬意を表し、標高3500m以上の周辺の農家で採れた食材だけを使うという。また、一帯の1000種におよぶ食用植物を採取し研究していることから、スペイン語で「1000」を意味する「ミル」を店名に掲げる。ここが存在することで、農家の収入向上にもつながっているのだ。

 
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▲左/食後はアマゾン産コーヒーをハンドドリップで。右/ミルのモダンな内装。窓からはアンデスの山容が望める。

 
スタッフのなかには海外から来ている農業学者もおり、畑仕事を手伝いながら収穫した食材を研究し、料理人と調理法を考える。その味は、アンデスの冒険を締めくくるにふさわしい、最高のご馳走だ。

 

 

Information about Peru

走るラグジュアリーホテル

ベルモンド アンデアン・エクスプローラー Belmond Andean Explorer
Belmond Andean Explorer
オールインクルーシブの豪華クルーズトレイン。4つのルートがあり、今回ご紹介したのは「ANDEAN PLAINS & ISLANDS OF DISCOVERY」。バロック建築が美しいアレキパを日没と共に出発し、チチカカ湖、高原地帯を経て、古代インカ帝国の首都クスコへ向かう2泊3日のコースだ。ほか、クスコ―プーノ間の1泊2日コース、クスコ―チチカカ湖―アレキパを2泊3日で巡るコースもある。

 
 

コンドルの谷の山岳リゾート

ベルモンド ラス・カシータス Belmond Las Casitas
BelmondLasCasitas
緑豊かなコルカ渓谷にひっそりと佇む20棟のバンガローは、すべてプライベートプール付き。コンドルウォッチング、アルパカフィーディング、ペルー伝統料理教室など、アクティビティーも豊富。
住所:Parque Curiña s/n Yanque, Arequipa

 
 

クスコ旧市街に憩う

ベルモンド パラシオ・ナザレナス Belmond Palacio Nazarenas
BelmondPalacioNazarenas
かつての宮殿と僧院を数年かけて修復した、クスコ有数の高級ホテル。スイート55室からなり、24時間バトラー・サービスを完備。アルマス広場のすぐ裏手に位置し、街歩きの拠点に最適だ。
住所:Calle Plazoleta Nazarenas 223, Cuzco

 

ベルモンドについての問い合わせ・予約
電話:0066-3381-3732
URL: www.belmond.com/ja/

 
 
ミル・セントロ MIL Centro
リマのモダンペルー料理レストラン「セントラル」を営む料理人ヴィルヒリオ・マルティネス氏による、最新プロジェクト。
電話:51-926-948-088
住所:Via a Moray, Maras
URL:milcentro.pe

 
 
ラ・ベニータ La Benita
シェフが母親から受け継ぐアレキパ郷土料理と、インカの食材を使った実験的な料理の両方が楽しめるレストラン。
電話:51-972-348-929
住所:Plaza Principal 114 Characato, Arequipa

 

ペルーへのアクセス

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東京(成田)、大阪(関西)からアメリカ・ロサンゼルス国際空港へJAL直行便が毎日運航。ロサンゼルスからLATAM航空とのコードシェア便でリマのホルヘ・チャベス国際空港へ。リマで乗り継ぎ、アレキパ、クスコへ。ほか、羽田、成田などからJAL 直行便で、ジョン・F・ケネディ国際空港または、ダラス・フォートワース国際空港を経由する行き方も。
取材協力/ペルー政府観光庁 www.peru.travel/jp

 

(SKYWARD2019年4月号掲載)
※記載の情報は2019年4月現在のものであり、実際の情報とは異なる場合がございます。掲載された内容による損害等については、一切の責任を負いかねますのでご了承ください。

 
 

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