JALグループの飛行機の操縦かんを握るキャプテンたち。コックピットの中からしか見えない景色、キャプテンだから知っている意外な事実など、あっと驚く雑学をキャプテン自身がご紹介します。
航空機の燃料
航空機の燃料がどこに搭載されているか、ご存じでしょうか。
私が乗務しているボーイング787には、左右の翼と両翼の間の胴体下部の3カ所に燃料タンクがあります。出発の約30〜50分前、タンクローリーが航空機の翼の下部にチューブをつないでいる様子を見たことがある方もいらっしゃるかもしれません。それがまさに、出発に向けて航空機が燃料を給油しているときです。
航空機の燃料は、石油の分留成分であるケロシンを主成分とするジェット燃料を使用しています。787の場合、燃料タンクの最大容量は約22万ポンド(約100トン)で、乗用車1台の重さ約1〜2トンと比べると、航空機が空を飛ぶためにはたくさんの燃料が必要だということがおわかりいただけるかと思います。
しかし、フライトでは毎回満タンで飛行しているわけではなく、航空法に基づき必要な量だけを搭載しています。目的地までの飛行に必要な量、(目的地に着陸できないことも想定し)代替飛行場までの量、代替飛行場上空で30分空中待機できる量など、不測の事態を考慮して必要な量が計算されます。
不必要に多くの燃料を搭載すると、機体重量が重くなり飛行中にデメリットが生じてきます。
例えば、パイロットは揺れの予測に基づき、巡航中も高度を変更していますが、機体重量が重くなるほどその選択肢が狭まります。また搭載量の決定には、飛行経路上や目的地空港の天候、到着機の混雑状況なども考慮しています。
このようにさまざまな状況を判断して、フライトごとに機長が適切な搭載量を決定しているのです。
さらに私たちパイロットは、地球環境のためにCO2排出量の削減にも取り組んでいます。例えばJALでは、「エンジン・アウト・タクシー」と称して、着陸後、安全に支障がないなどの条件が整った場合には、2つあるエンジンのうち、左のエンジンを停止しながら地上走行しています。このとき、機内の音が静かになるため、その変化に気づかれたことがある方もいらっしゃるかもしれません。
安全性を最優先に、定時性、快適性に配慮し、運航に必要な燃料を上手に管理することも、パイロットの重要な仕事なのです。
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「JAL機長たちが教えるコックピット雑学 飛行機とパイロットの仕事がよくわかる」
編著者 日本航空
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