一年で最も昼の時間が長くなる日、夏至。2024年の夏至は、6月21日の金曜日だ。ちなみに、国立天文台のホームページによると、その日の東京の日の出・日の入りの時刻は、
日の出:4時26分
日の入り:19時00分
とのことである。
日本や世界各国には夏至にまつわるさまざまな風習やお祭りがある。今回は、夏至の意味はもちろん、日本や世界各国の風習を紹介していくので、ぜひ旅行計画を立てる際の参考にもしてみてほしい。
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目次
夏至の意味と、日本で伝わる風習
夏至は、祝日でもなく目立った行事もないため、生活への馴染みが薄いかもしれない。しかし、夏至の意味や日本各地に伝わる風習を知るだけでも季節感を感じられ、夏を迎える心の準備にもなるだろう。
一年で最も昼の長い日
夏至は日本や中国で採用されている太陰太陽暦における二十四節気の一つ。夏至には「日長きこと至る(きわまる)」という意味があり、日本を含む北半球では一年のなかで最も昼の時間(日の出から日の入りまで)が長くなり、太陽の南中高度が最も高くなる日だ。一方、南半球では逆に一年のなかで昼の時間が最も短くなる。
日本では田植えの時期という理由などから、大きなお祭りはあまり行われていないが、各地方に独特の風習が根づいている。
三重県・伊勢市にある二見興玉神社と夏至
太陽の神様である天照大御神が祀られる伊勢神宮。その伊勢神宮に参拝する前に訪れるべきとされる二見興玉(ふたみおきたま)神社。ここで、毎年「夏至祭」が行われている。
二見興玉神社のある二見浦は古くから禊浜(みそぎはま)と呼ばれ、伊勢神宮へ参拝する人々が汐水を浴び、身を清める場として知られてきた。夏至祭では早朝3時半より祭事が行われ、2つの岩が夫婦として寄り添うように見えることから名づけられた「夫婦岩」の間から昇る朝日を「日の大神」として拝む。
夫婦岩の間から昇る朝日を拝めるのは、夏至を含む5月〜7月のみ。遠くに富士山を望む絶景のなか昇る朝日の荘厳さには感動を覚えるだろう。
二見興玉神社
URL:https://futamiokitamajinja.or.jp
日本各地の風習
日本各地に、夏至に食す食べ物や、夏至ならではの風習がある。多くは豊作を祈る風習だ。
静岡県などでは冬瓜(とうがん)を食べる風習がある。名前から冬の食べ物のように見えるが、実は夏が旬の野菜。また、大阪近郊では、タコの足のように稲の根がよく地面に広がりつくことを願って、タコを食べる風習がある。関東地方は新小麦で餅を作り、神様に供えるのが古来の習わしだ。島根県や熊本県にも、小麦の団子やまんじゅうを供える風習があるという。
夏至の頃には各地の多くの神社で年に二度ある大祓も行われる。二度のうち、6月末に行われる大祓は「夏越の祓(なごしのはらえ)」と呼ばれるが、これは心身の穢れや災厄の原因となる過ちを清めることが目的だ。夏越の祓では茅や藁を束ねた茅の輪を神前に立て、3回くぐりながら「水無月の夏越の祓する人は千歳の命のぶというなり」と唱える。
世界の夏至の風習
日本には夏至にまつわる風習が残るが、海外ではどうだろうか。実は海外にも、夏至の祭りを重要な行事として盛大に祝う地域があり、想像するだけでも面白い。いくつかご紹介しよう。
イギリスの夏至
イギリスでは、イングランド南部にある古代遺跡「ストーンヘンジ」で行われる夏至祭が有名だ。諸説あるが、紀元前2500年頃に神殿として建てられたといわれているストーンヘンジは、遠い昔から夏至の日を祝う場所として知られる。
ストーンヘンジの夏至では、中心にある祭壇石と少し離れたヒールストーンを結ぶ直線状に朝日が昇る。古代遺跡から昇る神々しい太陽を見ようと、毎年多くの人がストーンヘンジで夏至の朝を迎えているのだ。
ギリシャの夏至
ギリシャでは、古来からの風習を夏至のおよそ3日後にある「聖ヨハネの日」に行っている。
聖ヨハネの日に、ギリシャの未婚の女性は、自分の持ち物を容器に入れてイチジクの木の下に置く。すると夏至の魔法がかかり、将来の伴侶の夢を見るという話が伝わっている。
翌日には村の女性が集まり、その日に見た夢の話に花を咲かせる。その後は男性も交えて、交替で焚き火の上を飛び越す。3回うまく飛び越すと願いが叶うといわれており、カップルも生まれるという。
スウェーデンの夏至
スウェーデンでは、夏至を夏至祭(ミッドサマー)として華やかに祝う。クリスマスの次に大きなお祭りといわれており、なかにはクリスマスよりも重要な日と考える人もいるほどだ。
実はここスウェーデンでは、キリスト教が伝わる以前から夏至を祝っており、多くの人が家族や友人と過ごすために田舎に向かうという。
夏至祭の準備としては、まず野の花を摘んで編み、頭に載せる冠とメイポール(夏至柱)に吊り下げる花輪を作る。次に木の葉や花でメイポールを飾り、ダンスを踊るのに十分な広さがある場所にメイポールを立てたら宴の始まりだ。
シュナップスと呼ばれるお酒を手に、ニシンや新じゃがいものランチを賑やかに食べる。シュナップスを飲む前には歌を歌い、気分が盛り上がってくると、みんなでメイポールを囲んでダンスの時間だ。
この賑やかな宴は真夜中まで続く。スウェーデンの北部は白夜で、南部でも数時間薄暗くなる程度。いつまでも沈まない太陽の光を浴びながら、朝まで夏至を祝うのである。
フィンランドの夏至
フィンランド北部もスウェーデン北部と同じく夏至の頃には白夜を迎える。この国でも夏至祭は一年のうちで重要な行事の一つだ。
夏至祭の前日から休暇に入る人も多く、家族や友人と田舎のサマーコテージなどでのんびり過ごす。かがり火を焚き、サウナに入るのが伝統的な習慣だが、パーティーやバーベキュー、セーリングなど思い思いに過ごす人もいる。
フィンランドでは、古くから子孫の繁栄や伴侶を見つけることを願う行事が夏至に行われてきた。
フィンランドの伝説にも夏至にまつわる話は多い。有名な話の一つとして、枕の下に7種類の花を置いて寝ると、夢で将来の伴侶に出会えるという話がある。その影響で現代でも夏至に結婚式を挙げるカップルは多い。
かつては夏至祭の間、ずっとコッコと呼ばれるかがり火を焚いて、悪魔を追い払い豊作を願っていた。大騒ぎすることで悪魔を追い払い幸運を呼ぶともいわれており、夏至を祝うパーティーは、朝を迎えるまで賑やかに続く。
ポーランドの夏至
ポーランドも、各地で夏至祭が行われる。夏至の夜に人々が恋に落ちるといわれており、かつては川を挟んで未婚の男女が立ち、女性が川に流した花輪を男性がとるという行事があった。
素敵な男性に拾われれば、将来いい出会いがあり、逆に途中で沈んでしまうとなかなかお嫁に行けないという言い伝えがあるそうだ。
現在のワルシャワでは街を流れるヴィスワ川に巨大な花冠を浮かべ、コンサートなどで祭りを盛り上げている。
その他のヨーロッパの夏至
ほかのヨーロッパ諸国にも夏至にまつわるさまざまな行事や風習がある。フランスのプロバンス地方では子どもたちが火焚きの薪を集めて歩く、日本のどんど焼きと似た行事が行われる。
ドイツでも火を焚く風習があり、夏至の祝い火は落雷除け、魔法除け、牛疫除けと信じられている。
夏至以降、日が少しずつ短くなるため、火を焚くことで太陽の活力が衰えるのを防いだといわれていおり、この夏至に行われる火祭りは、ヨーロッパ諸国において大切な行事だと捉えられている。
南半球では冬至
北半球が夏至を迎える日は、南半球では冬至を迎えている。南半球のブラジルでは一年で最も夜の長い冬至を「フェスタジュニーナ」として祝う。
フェスタジュニーナはさまざまな人種の伝統が混ざり合った、多様性と豊穣を祝う行事。各地の音楽やダンス、料理で大いにお祭りを盛り上げる。
世界の夏至の風習を楽しもう
日本の夏至は、大きなお祭りもなく、あまり生活に溶け込んでいないかもしれない。しかし、ヨーロッパ、特に北欧の夏至は、一年のうちでも大切な節目の日であることがわかった。それぞれの国の文化や自然を満喫するために、夏至に合わせた旅の計画を立ててみるのもまた楽しいだろう。
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