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「白露」の由来を知り、「秋の七草」を観賞しよう

草や木に白い露がつくようになるとされる「白露(はくろ)」。年によって日は変わるが、2020年は9月7日。昨今は残暑は厳しいが、この頃にはわずかに暑さが和らぎ始める。何かと体調を崩しやすい季節の変わり目には、暦を意識し、自然のリズムに合わせて、心と体をいたわる暮らしを心がけてみてはいかがだろうか。ここでは、白露の由来や「秋の七草」を紹介する。

 

二十四節気の白露とは?

白露は、「二十四節気(にじゅうしせっき)」の一つ。秋を表す節気には、「立秋(りっしゅう)」、「処暑(しょしょ)」、「白露」、「秋分(しゅうぶん)」、「寒露(かんろ)」、「霜降(そうこう)」の6つがある。白露は3つ目であり、本格的な秋の訪れを感じさせる節気にあたる。

 
江戸時代に出版された暦の解説図書『暦便覧』に、「陰気ようやく重なりて露こごりて白色となれば也」という記述がある。今の言葉に置き換えて意味を補えば、「陰気(寒さや涼しさ)が増えて陽気(暑さ)を上回り、水蒸気が結露して露になり、白く輝く」といったところであろうか。

 
白露イメージ

 
白露には「露」の文字が入っている。もちろん露はこの時期だけのものではないが、気温差が激しい秋は露ができやすい。俳句や短歌の世界では、露は秋の季語となる。

 

二十四節気と日本の暦について

二十四節気について少し説明しよう。

 
地球上では、太陽の高さによって気温が変化して季節が変わり、月の引力は潮の満ち引きに影響を与える。つまり、人間を含む生き物や植物は、太陽と月の動きの影響を受けながら暮らしているということになる。

 
日本を含む多くの国では現在、「太陽暦」の一つである「グレゴリオ暦」が採用されているが、明治6(1873)年に太陽暦が採用されるまでは、月の運行や満ち欠けをもとにした「太陰暦」に、太陽の運行をもとにした太陽暦の要素を取り入れた「太陰太陽暦」を使っていた。この太陰太陽暦が「旧暦」と呼ばれる。

 
二十四節気は、この旧暦をベースに、1年を24等分して決められる。長い間日本人の暮らしと共にあり、季節感を形づくってきた旧暦や二十四節気を意識してみよう。きっと日本の四季を味わえるはずだ。

 

秋の七草に親しみ、秋を感じる

秋の風情を感じる植物に注目してみよう。白露の頃には秋の七草が咲き始める。秋の七草を紹介する前に、よく知られている「春の七草」に触れておきたい。

 
春の七草は、「セリ」「ナズナ」「ゴギョウ」「ハコベラ」「ホトケノザ」「スズナ」「スズシロ」のことを指す。「セリ、ナズナ、ゴギョウ、ハコベラ、ホトケノザ、スズナ、スズシロ、これぞ七草(せりなずな 御形はこべら 仏の座 すずなすずしろ これぞ七草)」という歌で覚えることもできる。

 
日本では、1月7日に七草をおかゆにして食べ、無病息災を祈願しつつ正月の暴飲暴食で疲れた胃腸を休ませる。スーパーなどで七草がゆのセットが販売されるので、身近に感じる方も多いだろう。一方、秋の七草はどうだろう。七草の名前すべてを言える人は多くないだろう。

 
秋の七草の由来は、歌人・山上憶良(やまのうえのおくら)が『万葉集』で詠んだ「秋の野に 咲きたる花を 指折り かき数ふれば 七種の花(あきののに さきたるはなを およびおり かきかずふれば ななくさのはな)」と「萩の花 尾花葛花 なでしこの花 女郎花 また藤袴 朝顔の花(はぎのはな おばなくずはな なでしこのはな おみなえし またふじばかま あさがおのはな)」の2首の歌に由来するという。

 
整理すると、萩は「ハギ」、尾花は「ススキ」、葛花は「クズ」、撫子は「ナデシコ」、女郎花は「オミナエシ」、藤袴は「フジバカマ」、朝顔は諸説あるが「桔梗(キキョウ)」を指すとされる。鮮やかな花や、おかゆの具になりそうな草はないが、控えめな美しさを備えた草花が名を連ねており、秋の風情は満点だ。

 
秋の七草は、山野に自生するものが多く、普段はなかなか目にする機会が少ない。そういう場合は、植物園や公園などで秋の七草を一度に見られる展示をチェックするとよいだろう。以下に、見所や解説を加えつつ秋の七草を紹介する。

 

萩(ハギ)

萩

 
秋の七草の筆頭をつとめるのが、古くより日本人に馴染みのある植物「ハギ」である。一般的に秋の七草のハギといえば、「ヤマハギ(山萩)」を指すことが多いが、「ミヤギノハギ」や「イヌハギ」などの種類もある。山野に自生するほか、庭木としても好まれる。秋の七草は「生薬(漢方薬のもととなる薬草など)」として用いられるものがいくつかあるが、ハギには特にそのような用途はない。代わりに花は愛らしく、昆虫の蝶のようなかわいい姿で目を楽しませてくれる。花の色は紅紫色のものが多いが、白などもある。

 

尾花(ススキ)

ススキ

 
秋らしいさびしげな情緒を感じさせる多年草。日本各地の山野や河原など、至るところに自生している。童謡に歌われたり、「幽霊の正体見たり枯れ尾花」といったことわざに登場したりと、日本人に馴染みのある植物である。かやぶき屋根の材料や十五夜の月見の飾り物などとしても欠かせない。

 

葛(クズ)

クズ

 
ツル性の多年草で、荒れ地に植生する。房状に咲く花は可憐で、落ち着いた赤紫色が美しい。クズの根は「葛根(かっこん)」と呼ばれ、お馴染みの「葛根湯(かっこんとう)」の原料となる。このような薬用以外に、根から取ったでんぷんで作るくず粉は、食用としても応用範囲が広い。くず餅やくず切り、くず湯などに利用される。

 

撫子(ナデシコ)

ナデシコ

 
日本女性ならではの美しさを例える「大和撫子(やまとなでしこ)」という言葉がある。ナデシコの花の色はピンクや白、赤などである。全部で5枚の花びらの先端に刻みがある。茎や葉、根などの部位が生薬として用いられる。ナデシコの仲間である「セキチク(石竹)」という種類は中国原産の品種で、こちらも人気がある。

 

女郎花(オミナエシ)

オミナエシ

 
黄色い粒のような小花が集合して咲く。花だけでなく、つぼみや花に近い茎あたりまで黄色いため、花が枯れても長く観賞できる。漢字では「女郎花」と書くが、「女(おみな)を圧す(へす)=きれいな女性を圧倒する」が語源といわれている。全体的に優しげな印象で、日本の秋にぴったりだ。根や花枝が生薬として使われる。

 

藤袴(フジバカマ)

フジバカマ

 
河原に自生するが、近年は土地開発により絶滅が危惧されている。花は小さく散房状に連なる。花の色は淡い青紫色の藤色で、花びらが袴のような形をしていることから、フジバカマの名前がついた。生の状態だとほぼ無臭だが、乾燥するにつれて、桜餅のような甘い香りを放つ。古くから香料として使われるほか、生薬としても利用される。

 

桔梗(キキョウ)

キキョウ

 
先に紹介した山上憶良が詠んだ歌の最後の「朝顔(あさがお)の花」については諸説ある。「ムクゲ」や「ヒルガオ」などといわれる説もあるが、キキョウとする説が有力だ。キキョウの花は星形で、落ち着いた青紫色。根が生薬や「桔梗湯(キキョウトウ)」などに使われる。

 

夏から秋へ、移ろう季節を楽しもう

白露の頃は、夏がいつの間にか去ろうとし、草木が季節の移ろいを教えてくれる時期だ。忙しい現代の暮らしのなかで、暦は見過ごしてしまいがちな季節の移ろいを知らせてくれる。秋の気配が濃くなっていくこの時期こそ、日本の気候や風土にあった暮らしのヒントを探してみよう。

 
※本文中で紹介した生薬を使用する場合は、必ず医師や薬剤師に事前に相談してください。
 
 

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