フェアバンクスから北東に1時間30分ほど車を走らせると、針葉樹の森に囲まれた一本道の奥に、一軒のリゾートが見えてくる。1905年に探鉱者のスワン兄弟によって発見されたチナ温泉は、古くからフェアバンクスの人々を癒やしてきた場所。現在は、「チナ温泉リゾート」となり、街明かりと離れた環境から、オーロラ観測の拠点としても人気だ。
目次
野菜も電気も温泉の恵み 自給自足の美しきリゾートへ
「チナ温泉リゾート」を訪れて驚いたのは、そのスケールだった。森に包まれた敷地内には川が流れ、露天風呂の周囲にいくつものキャビンが並ぶ。さらに、発電所や滑走路、ビニールハウスがあり、犬ぞりが走るトレイルも張り巡らされている。その風景は、リゾートというよりも一つの美しい村のようだ。
「フェアバンクスから遠く離れた『チナ温泉リゾート』には、電気や水道、ガスなどの公共設備が届いていません。ですから私たちは、自給自足できるコミュニティーであることを目指しているのです」と話すのは、同リゾートで国際マーケティングマネジャーを務める森茂雄さん。
その言葉を如実に物語るのが、敷地内の地熱発電所だ。かつて同リゾートではディーゼル燃料を利用して発電を行っていたが、2006年に地熱温水を利用した発電所を建設。現在は、リゾートで使うすべての電力を賄っているという。
「一般的な地熱発電は高温の温水を必要としますが、ここで得られる温水は70度以下と、世界の地熱発電では類を見ないほど低い温度です。当初は『本当に完成するのだろうか』と誰もが思いましたが、オーナーのバーニー・カールの意思のもと、最新のテクノロジーを利用した再生エネルギープロジェクトをスタート。バーニーは生粋のアラスカ男で夢想家ですから『絶対に成し遂げるんだ』という信念を曲げることはありませんでした。結果、発電が成功した時には、心の底から驚きました」
「チナ温泉リゾート」では、発電だけでなく、温水を利用した野菜栽培なども実践。アラスカの地熱資源利用に新たな可能性を提示する取り組みとして注目されている。
夜、露天風呂に身を沈め、ゆらゆらと立ち昇る湯気を眺めながら考える。ゴールドラッシュの時代にパイオニアによって発見され、現代のパイオニアによって進化するチナ温泉。ここは、不屈の精神によって生まれた極北のオアシスなのだ、と。
Vol.4
へつづく
Information about Alaska
アラスカ大学 北方博物館 University of Alaska Museum of the North
アラスカ大学フェアバンクス校に隣接する博物館。ゴールドラッシュ時代の歴史的資料や、先住民文化、自然、アートなどアラスカに関わる豊富な展示を誇る。
電話:1-907-474-7505
住所:1962 Yukon Dr, Fairbanks
URL:www.uaf.edu/museum/
チナ温泉リゾート Chena Hot Springs Resort
アラスカで唯一年間を通じてオープンする温泉リゾート。野趣溢れる露天風呂のほか、オーロラ観測や犬ぞり体験など多彩なアクティビティーを楽しめる。
電話:1-907-451-8104
住所:56.5 Chena Hot Springs Road Fairbanks
URL:chenahotsprings.com(英語)
www.chenahotspringsjapan.com(日本語)
パイオニア・ミュージアム Pioneer Museum
「パイオニア・パーク」内に位置する博物館。金の採掘や交易に使われた道具、20世紀初頭の家具など、フェアバンクスの歴史を物語るさまざまな展示が行われる。
電話:1-907-456-8579
住所:2300 Airport Way, Fairbanks
URL:www.pioneersofalaskafairbanks.org/about/pioneer-museum/
ベテルス・ロッジ Bettles Lodge
北極圏の入り口の村、ベテルスのシンボル的ロッジ。夏は登山やカヤッキング、冬はオーロラ観測や犬ぞりツアーの拠点として各地から多くの旅人が訪れる。
電話:1-907-692-5111
住所:1 Airline Dr, Bettles, AK 99726
URL:bettleslodge.com/new/
アラスカへのアクセス
東京(成田)からシアトル・タコマ国際空港(*)・バンクーバー国際空港へ、また東京(成田)・大阪(関西)からロサンゼルス国際空港へJAL直行便が毎日運航。アラスカ航空に乗り継ぎ、フェアバンクス国際空港へ。もしくは、シアトル・タコマ国際空港(*)・ロサンゼルス国際空港からアラスカ航空でアンカレッジ国際空港へ。
*2019年3月31日より、東京(成田)-シアトル線開設。
コーディネーション/HAIしろくまツアーズ
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