旅への扉

シアトル イノベーションが生まれる街 [Vol.2]

文/吉原徹 撮影/柳川詩乃

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市場の商店からスタートし、世界的なコーヒーショップチェーンへと飛躍したスターバックス。同社に転機が訪れたのは1983年のことだった。この年、イタリアを訪れたハワード・シュルツ(後の CEO)は、現地のエスプレッソバーに感銘を受け、“コーヒーバー文化”をシアトルに持ち帰ることを決意。その後、コーヒー豆の販売だけでなくエスプレッソなどのドリンクの提供も行う現在のスタイルになってゆく。

 

STARBUCKS “シアトライツ”の支えと新たな挑戦

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▲豆を焙煎する香りが空間に満ちていた。

 
「当時のアメリカには私たちのようなコンセプトを持つコーヒーショップはありませんでしたから、スターバックスはオンリーワンの存在として注目されました。また、地元を愛する“シアトライツ(シアトルの人々)”の存在もスターバックスの成長を支えてくれた要因の一つです。彼らには、ローカル企業を積極的に応援しようという気質があるのです」とクラボウさんは話す。

 
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▲左/クラボウさん。右/「スターバックス・リザーブ・シアトル・ロースタリー」には複数 のバーカウンターがあり、バリスタとの会話を楽しめる。

 
“シアトル系コーヒー”というムーブメントを生み出したスターバックス。同社の新たな一歩もまた、ここシアトルで踏み出されている。2014年にオープンしたスターバックス・リザーブ・シアトル・ロースタリーはコーヒー焙煎所を備えた次世代の旗艦店。1920年代の建物をリノベーションした広大な空間には、美しいバーカウンターや巨大な焙煎設備のほか、ライブラリーやベーカリーなども併設。コーヒーバイヤーが世界中から選りすぐった高品質なコーヒー豆だけを年間で約75種類扱い、サイフォンやエスプレッソ、コーヒープレスなど9種類の異なる淹れ方で味わえる。

 
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▲1号店からわずか9ブロックの距離に開店。

 
「コーヒーの淹れ方はバリスタに。焙煎のことはロースターに。それぞれのプロフェッショナルと会話をしながらコーヒーを体験できることが、この店の特長。私たちはコーヒーを売るだけでなく、コーヒーを楽しむという文化そのものをデザインしたいのです」とクラボウさん。スターバックス・リザーブ・ロースタリーは現在、上海、ミラノ、ニューヨークにも出店。今年の2月末には東京・中目黒にも登場するという。シアトル発の新たなコーヒーカルチャーが世界に再び大きな変革をもたらすかもしれない。

 

Amazon アイデアを生む革新的なワークスペース

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▲オフィスビル「デイ・ワン」の前に登場した「ザ・スフィアズ」。

 
近年、急速な経済発展を遂げるシアトルだが、その原動力となっているのがマイクロソフトやアマゾンを筆頭とする“テック企業”の存在だ。これらの巨大企業が本社を置くシアトル近郊には、世界中からIT技術者や起業家が集まり、日々新たなビジネスや技術が生み出されている。

 
そんなシアトルの“今”を象徴するエリアが、アマゾンが本社を置くサウス・レイク・ユニオン地区だ。同社のオフィスビルが林立するこのエリアには、多彩な国籍の人々がする。周辺にはレジのない次世代小売店として話題になった「アマゾン・ゴー」や地域の人々に無料でバナナを配布する「アマゾン・コミュニティー・バナナ・スタンド」など、ここがアマゾンの本拠地であることを物語る施設も多い。

 
「シアトル近郊にはアマゾンのビルが35以上あり、 4万5000人を超える人々が働いています」とは、同社広報のジョン・サさん。

 
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▲要予約だがアマゾンの社屋を巡る「アマゾン・ヘッドクオーター・ツアー」も行われている。

 
サさんの案内でアマゾンの仕事場を巡ると、そこには実に心地よい空間が広がっていた。ワークスペースやカフェは広く開放的で、エレベーターには誰もが落書きできる黒板などの遊び心も。カジュアルな服装の人が多く、犬を連れて仕事をする人の姿もある。同社では社屋が並ぶこのエリアを「キャンパス」と呼ぶというが、まさに大学のように知的で自由な空気が満ちている。

 
なかでも印象的だったのが、3つのガラスドームからなるワークスペース「ザ・スフィアズ」だ。2018年1月にオープンしたこの空間には、世界30カ国以上から集められた4万本以上の植物が植えられており、随所にテーブルやチェアが配されている。

 
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▲左/「ザ・スフィアズ」も第1・3土曜日限定で公開(要予約)。右上/アマゾン・コミュニ ティー・バナナ・スタンド。右下/犬を連れての出勤もOK。オフィスビルの近くにはドッグラン用スペースも整備されていた。

 
「ザ・スフィアズは自然を感じられる環境で、より健康的に仕事に向き合うために生まれたワークスペース。カジュアルなミーティングに使ったり、友人や家族を連れてきたり……。とても人気が高い場所です」とサさん。

 
緑に囲まれた植物園のようなワークスペース。世界を驚かせるようなアイデアは、きっとこんな革新的な仕事場で生まれてゆくのだ。

 
Vol.3へつづく

 

 

Information about Seattle

シアトルらしさが感じられるホテル

Embassy Suites by Hilton Seattle Downtown Pioneer Square
hotel
新たなテクノロジーが次々と生まれるシアトルには、最先端の技術に触れられるホテルもある。歴史的建造物が建ち並ぶシアトル発祥の地、パイオニア・スクエアの一角に位置する「エンバシー・スイーツ・バイ・ヒルトン・シアトル・ダウンタウン・パイオニア・スクエア」の客室には、人工知能搭載のスマートスピーカー「アマゾン・エコー」が備えられており、スピーカーに話し掛けるだけでモーニングコールや照明の調節などが可能だ。スタイリッシュで広々とした客室のデザインも魅力。「シアトル・マリナーズ」の本拠地球場へのアクセスもよく、シアトル観光の拠点にお勧めだ。
電話:1-206-859-4400
住所:255 S King St., Seattle
営業時間:17:00〜23:30(L.O.)
営業時期:詳細はウェブサイトにて要確認。
URL:embassysuites3.hilton.com/en/hotels/washington/embassy-suites-by-hilton-seattledowntown-pioneer-square-SEAPSES/index.html

 
 

キンプトン・パラディアン・ホテル Kimpton Palladian Hotel
palladianhotel
パイク・プレイス・マーケットから徒歩約5分と好アクセスの4つ星ホテル。1階には、シーフードを提供するレストランを併設する。
電話:1-206-448-1111
住所:2000 2nd Ave., Seattle
URL:www.palladianhotel.com

 
 
パイク・プレイス・マーケット Pike Place Market
100を優に超える、生鮮食料品店や雑貨店、レストラン・カフェが集う活気のある市場。海
側に増設された店舗スペースも必見。
電話:1-206-682-7453
住所:1st Ave., & Pike St., Seattle
URL:www.pikeplacemarket.org

 
 
スターバックスコーヒー パイクプレイス店 PIKE PLACE STARBUCKS
パイク・プレイス・マーケットに建つ1号店。開店当時のロゴをあしらったマグカップやタンブラーといった1号店限定アイテムが人気。
電話:1-206-448-8762
住所:1912 Pike Place, Seattle
URL:www.starbucks.com

 
 
ザ・スフィアズ the spheres
アマゾン本社ビルの前に建つ、アマゾン社員専用の植物園型のワークスペース。本社見学
ツアーへの申し込みで1階展示室以外にも入室可。
〔アマゾン本社見学ツアー〕予約ウェブサイト
URL:www.seattlespheres.com/the-spheres-weekend-public-visits

 
 
アマゾン・ゴー  amazon go
2018年1月に1店目をオープン以来、無人ストアとして世界中の注目を集める。事前にアプリ登録を済ませれば、旅行者も購入可能。
〔7th & Blanchard 店〕
住所:2131 7th Ave., Seattle
URL:www.amazon.com/b?ie=UTF8&node=16008589011

 
 
シアトル中央図書館  The Seattle Public Library
幾何学的な外観が目をひく、シアトルの新たな観光名所の一つ。開放的な空間や、フロアごとに異なるインテリアデザインも魅力。
電話:1-206-448-8762
住所:1912 Pike Place, Seattle
URL:www.spl.org

 
 
ロッククリーク・シーフード&スピリッツ  Rockcreek Seafood & Spirits
蟹や牡蠣といった西海岸のシーフードを中心に提供するレストラン。毎日獲れたての食材を使った料理の数々で地元での人気が高い。
電話:1-206-557-7532
住所:4300 Fremont Ave., N, Seattle
URL:rockcreekseattle.com

 

シアトルへのアクセス

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東京(成田)から JAL 直行便がシアトル・タコマ国際空港へ毎日運航。

 

(SKYWARD2019年1月号掲載)
※記載の情報は2019年1月現在のものであり、実際の情報とは異なる場合がございます。掲載された内容による損害等については、一切の責任を負いかねますのでご了承ください。

 
 

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